その結果、これまで主力として使われていた化石燃料由来の重油ボイラーをほとんど使わなくて済むようになり、木質チップなどのバイオマス燃料も従来の約6割削減することに成功しています。
当然、燃料にかかるコストも大幅に削減され、町全体の暖房システムは経済的にもメリットが大きいものになりました。
この成果について、地域暖房会社Loviisan Lämpö社のCEO、ミッコ・パアヤネン氏は、「砂電池のおかげで排出量を大幅に削減できただけでなく、熱供給の安定性や信頼性も向上しました」と喜びの声を語っています。
こうして成功を収めた砂電池ですが、導入前から使われていたバイオマスボイラーも完全に廃止したわけではなく、需要が特に高まるピーク時のために念のため残してあります。
ただ実際には、このボイラーをほとんど使わなくても問題なく暖房を維持できることが確認されています。
地味だけど最強?砂がエネルギー貯蔵の世界標準になる日

今回の研究によって、「砂」が実は非常に優れた熱の貯金箱として、再生可能エネルギーの最大の弱点である「貯める難しさ」を解決できる可能性が示されました。
砂というと、どこにでもあって地味で目立たない存在ですが、そのシンプルさがむしろ強みとなっています。
リチウム電池のような最先端技術を使った蓄電池は高性能ですが、コストが高く、製造や廃棄時の環境負荷も課題となっています。
一方、砂電池は「リチウム電池よりも安くて環境にもやさしい」という、周りの人にも思わず教えたくなる利点があります。
砂そのものが安価で大量に手に入るうえに、廃材として捨てられる石粉などを再利用すれば、新たに環境負荷をかけることもありません。
また、設備も特別な化学薬品や貴重な材料を必要とせず、耐久性も優れているため長期間安定して使うことができます。