しかも妊娠20週はまだ胎児の顔が正確に判別できないので、父親似か母親似かを判断できる段階ではありませんでした。

それなのに未婚の女性は「子どもの顔は父親似」と答える確率が圧倒的に高くなっていたのです。

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Credit: canva

研究者たちはこの傾向について、先の「父性の不確実性」を踏まえて次のように解釈しています。

「母親が胎児を父親に似ていると強調することで、父性の不確実性を減らし、子どもへの支援や資源提供を引き出す戦略が働いている可能性がある」

この主張がたとえ無意識のものだとしても、それは長い進化の歴史の中で形成された、親としての心理的な知恵なのかもしれません。

「赤ちゃん、あなたにそっくりね」

その一言は、ただの愛情表現でも、お世辞でもない可能性があります。

とくに未婚で妊娠した女性にとっては、それが将来の父親の子育て参加を確保するための重要なメッセージである可能性が高いのです。

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参考文献

Almost all unmarried pregant women say that the fetus resembles the father, study finds
https://www.psypost.org/almost-all-unmarried-pregant-women-say-that-the-fetus-resembles-the-father-study-finds/

元論文

Investigating perceptions of fetal resemblance
https://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2025.106670

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部