IDOMはシステムの力で、利益を創出する仕組みを転換する

中古車のガリバー、果敢なDX化・AI活用で売上1兆円へ…優秀なエンジニアを採用できる理由の画像1
(画像=『Business Journal』より引用)

 IDDによるエンジニアの採用は、順調に進んでいると野原氏は語る。IDDのエンジニアは、出向先のIDOMにおいて、どのようなプロジェクトに従事することになるのだろうか。

「当社においては、売上高を現在の5000億円から1兆円に伸ばすことはすでに想定内であり、問題はそれをいかに短い時間で達成するか。ここにデジタルの力で改革ドライブをかけ、達成を早めることがIDDに求められています。そのために現在進めているのが、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)システムの作り直しであり、これを武器として、プロフィット・マネジメントからプロセス・マネジメントへの転換を実現することです。

 当社が行っている中古車ビジネスでは、店舗責任者が替わると利益が倍になったり半分になったりと、大きく変動することがよくあります。商材である中古車の金額が高い分、店舗責任者個々の能力によって成果が振れやすい。中古車流通の業界では一般的にプロフィット・マネジメント、つまり『利益を出す』という方向で、店舗責任者に指導や指示が行われがちです。

 その1つの帰結が、2年前に社会問題になった同業他社の不正で、あの根幹にあるのがプロフィット・マネジメントだと私は考えています。当社がその弊に陥らないためには、プロフィット・マネジメントでなく、プロセス・マネジメントを行わないといけない。プロセス、つまり店舗責任者に求められるものを本部が標準化・手順化して、それを遵守するマネジメントに変えていく必要があります」

 ここで問題になるのが、拙速にプロセス・マネジメントへの切り替えを進めてしまうと、売上の低下が避けられないことだ。営業の現場に「言われた通りやれば数字が出なくてもいいんですね」と受け取られてしまっては元も子もない。そこで、定められたプロセスが正しく効果があるということを担保し、それが個々の店舗で適切に行われているどうかを確認するのが、システムなのだ。

「プロフィット・マネジメントは、店舗責任者個々の能力に依存するものなので、当社全体という規模での再現性に欠けます。この先、当社が売上高倍増の道を進むにあたっては、ハイペースに出店を継続する必要がある。それに応じて、能力の高い営業責任者を続々と用意できるかというと、短期間では難しい。だからこそ、定められた通りに実行していけば利益が出るプロセスを会社として用意するべきだと考えているわけで、ここにCRMの作り直しが関わってきます。

 Gulliverは中古車の買取・販売・整備を行っており、この3事業のそれぞれに顧客管理の仕組みがあります。ただ、これらの顧客データを引き出しやすい形でつなげることはできていませんでした。あるお客様の名前を入力した時に、中古車の売却・購入・整備といった当社とのお付き合いの履歴を一挙に確認できるような形にはなっていないんです。必要なのは、顧客のデータを全社的に同一のシステムで、一気通貫に見られるようにすることで、これを実現するためにCRMを作り直しているわけです。それによって、仮に店舗責任者や営業担当が違っても、すべてのお客様にGulliverというブランドとして、均一に高水準のサービスを提供できるようになります。

 今後はオンライン上での商談を含めてシステムを構築し、ご成約後の納車の管理から納車後の定期整備のご案内などはシステムに担当させていきます。その代わり、営業社員には人間だからこそできる、きめ細かい感情面をケアする営業活動に注力してもらいます。これが、システムを活用してプロフィット・マネジメントからプロセス・マネジメントに移行する流れのイメージです」

 中古車ビジネスにおいてもシステムをフル活用することで、Eコマースサイトが訪問客の導線や購入履歴を把握して別の商品のレコメンドを行っているように、顧客に対して機を逃さず商機をプッシュすることが可能になる、と野原氏は語る。具体的には、店舗への来店やオンライン上での接客の際にシステムを活用して顧客情報をデータ化しておき、それをAIに解析させるのだ。

 顧客が成約前にどのようなニーズを語り、どんな車を探していて、どんなご家族構成で、営業担当がどのように接客したのかということを、Eコマースにおける訪問客のウェブ上の挙動のように、詳細にデータとして蓄積する。それを解析したAIは、中古車を購入した顧客が点検を必要とする時期を察知することができるし、買い替えのニーズやその家族構成に合った車種などを、営業社員に対してプッシュすることができる。このような形でIDOMのプロセス・マネジメントは実現できるし、Amazonより優秀なレコメンドエンジンを作れると、野原氏は自信を隠さない。