イスラエルは、アメリカの軍事力に過剰な期待を抱いている。バンカーバスターの能力に期待し、その使用によってイランの核開発能力の完全破壊を期待している。しかしこれについてはイランもアメリカの軍事能力を知ったうえで施設開発をしていたはずなので、果たして本当に達成可能なのかは不明である。

バンカーバスターを使用しても明白な成果が見られないときには、アメリカは威信の失墜のリスクがある。そして中東の米軍に対する攻撃のリスクを背負い、泥沼の戦争の直接当事者として引きずり込まれるリスクを背負う。

トランプ大統領は、戦争の泥沼に陥った「対テロ戦争」の時代の前任の大統領たちを批判して、二度にわたって大統領選挙で勝利を収めた。そして今、トランプ大統領の岩盤支持層の「MAGA(再びアメリカを偉大に)」派の人々の多くが、イランとの戦争に明確な反対を表明している。

5月13日のサウジアラビアにおける演説で、トランプ大統領は、前任の米国大統領たちを批判して、「介入主義者たちは、自分たちが理解もしていない複雑な社会に介入し、国家建設者たちは、何も作らず破壊だけをした。彼らは、他人が何をすればいいかを語ったが、自分たちですら何を言っているのか理解していなかった」と述べて、拍手大喝采を得た。

そのトランプ大統領が、中東で最大の人口を持つイランに軍事介入するとなると、これはほとんど自己否定につながる。MAGAの否定につながる。

もっとも「新しい19世紀」の政策体系を持つトランプ大統領は、相互錯綜関係回避原則の新しいモンロー主義の性格を持っている一方で、ネイティブ・アメリカンを殲滅した時代の「明白な運命」論を信奉しているかのような傾向も持っている。

宗教的な視点に立った二分法にもとづく世界観で、つまり神の恩寵にしたがって行動する自分たちと、自分たちではない神の恩寵にもとづいていない者たちを区分けにもとづいて、軍事行動を正当化する傾向だ。トランプ大統領は、イスラエルの事柄になると、途端に介入主義者になる。