TOCANAでも度々報じてきた「シティキラー(都市破壊級)」と呼ばれる小惑星「2024 YR4」が地球に衝突する可能性はほぼ無くなった――。NASAの発表に世界は胸をなでおろした。しかし、安堵するのはまだ早い。科学者たちは今、この恐るべき宇宙の岩石がもたらす、新たな脅威のシナリオに警鐘を鳴らしている。
標的は地球から月へ、衝突確率4.3%の悪夢
直径約60メートル。もし地球に直撃すれば、広島型原爆の500倍もの爆発を引き起こすとされる小惑星「2024 YR4」。当初、2032年に地球へ衝突する確率は3.1%とされ、天文学者たちの間で緊張が走った。幸いにも、その後のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による緊急観測で、地球への衝突コースからは外れていることが確認された。
だが、観測データは同時に、驚くべき可能性を明らかにした。この小惑星が、2032年12月22日に「月」へ衝突する確率が4.3%も存在するというのだ。地球衝突のリスクは回避できたが、物語はまだ終わっていなかったのである。

月の破片が地球に降り注ぐ
もし、この小惑星が月に衝突したら何が起きるのか。ウェスタンオンタリオ大学のポール・ウィーガート博士らによるシミュレーションは、衝撃的な未来を描き出す。
小惑星は時速約4万6800kmという猛スピードで月に激突し、直径約1kmにも及ぶ巨大なクレーターをえぐり出す。これは、過去5000年間で最大級の月面衝突イベントになるという。問題は、その凄まじい衝撃によって放出される大量の月の破片(デブリ)だ。その総量は実に1万トンにも達すると推定されている。
放出された破片は宇宙空間に飛び散るが、もし衝突場所が適切だった場合、地球の強い重力が放出物の10%から30%を「引き寄せる」ことになる。それはまるで、月面から地球に向けて無数の破片が撃ち込まれるようなものだ。