「そこにあるはずのないものを検出した」

 マルタで開かれた国際会議の席上、フィリッポ・ビオンディ教授は静かに、しかし力強く語り始めた。彼が率いる「ケフレン・プロジェクト」が、最新技術を駆使し、TOCANAでもその存在をかねてより報じてきた、ギザのピラミッドの地下に眠る未知の構造物を発見したというのだ。この挑発的ともいえる発表は、考古学の世界に大きな波紋を広げている。

「音」で地下を聴く、革命的な探査技術

 この歴史的な発見を可能にしたのは、ビオンディ教授のチームが開発し、特許を取得した全く新しい探査技術だ。航空機や衛星から地表に向けて電磁波を放ち、その反射を分析する「合成開口レーダー(SAR)」に「ドップラー分析」を組み合わせたこのシステムは、従来の探査とは一線を画す。

 最大の特徴は、電磁波の応答を「物理的な振動パターン」に変換する点にある。「私たちは、地面の応答を音として聴いているのです。まるで石に当てた聴診器のように、文字通り地下にあるものの音を聞き分けることができる」とビオンディ教授は説明する。この方法により、地中深くに埋もれた空洞や壁、通路などを、その質量や形状の違いから驚くべき精度で検知できるのだ。

 この科学的調査では、AIが探すべき場所を示唆するものの、最終的な3次元モデルの再構築は熟練した人間の専門家が行う。「どこを見るべきかはAIが教えてくれる。だが、それを解釈し、形にするのは人間の仕事だ」と彼は付け加えた。

橋の崩落さえ予見した、驚異の精度

 この技術が絵空事でないことは、過去の実績が物語っている。チームはギザでの調査に先立ち、様々な場所でその精度を検証してきた。

 最も衝撃的だったのは、2019年にイタリアで悲劇的な崩落事故を起こしたモランディ橋のケースだ。事故後のシミュレーションで、チームは崩落の数週間前に橋の構造内に発生していた異常な振動を彼らのシステムが遡及的に検出できることを証明した。もし当時この技術があれば、多くの命が救われたかもしれない。

 また、世界で最も脆弱とされるイラクのモスルダムでは、内部の亀裂や地下の漏水を正確に特定。そのほか、米国の鉄道トンネルやイタリアの地下研究所でも、直接アクセスできない構造物の位置や形状を正確に描き出すことに成功している。これらの実績が今回のギザでの発見に揺るぎない信頼性を与えているのだ。

ピラミッドの地下に眠る謎の巨大構造物、最新科学がその姿に迫るの画像2
(画像=画像は「YouTube」より)