歴代のwishシリーズへの取り組みと蓄積
AQUOS wish5のスペックは「安かろう悪かろう」とはかけ離れている。6.6型の大画面ディスプレイを採用し、米国防総省が定める「MIL-STD-810H」準拠の耐衝撃性能、防水性能、防塵性能、80度の高温・高圧の水流への耐久性を備えるなど高い堅牢性を誇る。プロセッサはwish4に搭載しているものより新しい台湾MediaTekの「Dimensity 6300」を採用して処理能力が向上しており、ディスプレイは120Hzのリフレッシュレートに対応してスクロールの操作がよりなめらかになっている。このほか、子どもの使用も意識して、スマホを強く振ると大音量のアラームが鳴り、位置情報を保護者などに自動で共有する「防犯アラート」機能も搭載している。
気になるのは、エントリーモデルとはいえ高いスペックを備えているにもかかわらず、なぜ3万円台という低価格を実現できたのかという点だ。
「wishシリーズは今作で5作目となりますが、歴代のwishシリーズへの取り組みと蓄積もあり、今作ではIPX9(高圧蒸気洗浄噴射試験)への対応を実現できました。また、生産体制の最適化や部品構成の見直しなども積み重ねており、その結果として高い機能性を実現しながらも低価格でお届けができるかたちになりました」
親会社である台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)のグループ力を生かした調達力というのも要因としてはあるのか。
「一つの要素であることは間違いございません。価格と性能のバランスを見極めつつ部材を選定しており、そのなかで鴻海の調達力を活用しているという側面がございます」
ターゲット顧客は、前述のとおり中学生をはじめとする10代となるのか。
「wishシリーズが持つ特性として、やはり低価格という点はあります。法人のお客さまを含めて、いろいろな方々に手に入れていただきやすいという点はwishシリーズの役割だと考えております。特に初めてスマホをお求めになられる層に絞っているわけではありませんが、そうした方々により響くような特徴を多く備えた機種であると考えております」
防犯アラート機能は大きな特徴
特に強調したいwish5の特徴や強みについても聞いた。
「新たに搭載した、振るだけで動作する防犯アラート機能は大きな特徴であると考えております。事前に登録した保護者の方へ電話がかかり、SMSや位置情報を自動で送信することができますので、安心の要素としてご提供できると考えております。また、その他の点としましては、米国防総省の調達規格『MIL-STD-810H』に準拠しており、更に対コンクリート落下性能も備え、アルコールの除菌シートで拭いたりハンドソープ洗浄にも対応しておりますので、日常で安心してお使いいただけるというのも特徴です。IPX9にも対応しており、80℃の熱湯と水道水の約40倍の強い噴水にも耐えられますので、日常で例えば熱いシャワーをかけてお風呂で使われても大丈夫であったり、そういったところで安心してお使いいただけるかなと思っております。
もう一点、ディスプレイに力を入れておりまして、120Hzのリフレッシュレートに対応しております。wish4までは90Hzでしたが、より滑らかな操作の快適性を実現しております」
ITジャーナリストの石川温氏は「お買い得」だとして次のように評価する。
「この価格帯のスマホでありながら、画面表示のリフレッシュレートが120Hz駆動を実現するなど、あり得ないスペックが一部、搭載されています。日本メーカーという点においても安心感があり、かつスペック的にも申し分ありません。
低価格実現の要因としては、チップセットがMediaTek製のコストパフォーマンスのいいものを採用しているという点が大きいです。そもそも、メーカーとしてはこのような安価な端末は決してやりたいものではないでしょう。しかし、総務省が端末の割引価格の上限を2万円に設定したことで、中国メーカーがこの価格帯に一気に製品を投入。シャープとしては対抗せざるを得なくなり、wishシリーズでコスパのいいモデルを出さざるを得なくなったという面もあるのではないでしょうか。親会社であるホンハイの高い調達力も活かすことで、この価格帯で競争力を持つ製品を出せるのではないでしょうか」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)