●この記事のポイント ・米メタ、新興AI企業・米スケールAIに143億ドル(約2兆500億円)もの出資 ・スケールAI・CEOのアレクサンダー・ワン氏は、世界最年少でビリオネアになったオピニオンリーダー ・メタ、ラベリングの高い技術力を持つスケールAIを抱えることによって有利に競争を進めていく狙いか
米メタが「ラベリング」を手掛ける新興AI企業・米スケールAIに出資したと発表。メタが143億ドル(約2兆500億円)もの資金を投下してスケールAI株の49%を取得すると伝えられており、話題を呼んでいる。スケールAIとはどのような会社であり、なぜメタは多額の出資を行うのか。また、世界最年少でビリオネア(資産10億ドル以上)になり、AIの世界では20代という若さながらオピニオンリーダー的な存在であるスケールAI・CEOのアレクサンダー・ワン氏とは、どのような人物なのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
●目次
AIを使って大量のラベリング
スケールAIとは、どのような企業なのか。また、同社が手掛ける「ラベリング」とは何なのか。エクサウィザーズ「AI新聞」編集長・湯川鶴章氏はいう。
「AIの領域では重要な要素が3つあるといわれており、一つ目がアルゴリズム、つまりAIのモデル自体、2つ目がそのAIモデルを動かすサーバーの半導体、3つ目が学習データです。スケールAIはこの学習データをつくる会社です。同社が手掛けるラベリングというのは、学習用データの一つひとつに、それが何であるか名前を付ける作業のことです。
例えばAIが猫の写真を見たときに、それが猫であると判断するプロセスは、人間の子どものそれと似ていて、『ヒゲが何本あるのか』『耳が尖っている』といった特徴を細かく教えられることで認識するわけではなく、単純に猫をいっぱい見ることで『これが猫なんだ』とパターン認識するというかたちです。AIに猫の写真を学習させる際には、多数の猫の写真に『これが猫である』というラベルを付ける必要があり、その作業がラベリングです。
従来はこのラベリングという作業は人間が行っていましたが、スケールAIはAIを使ってラベルを自動的につけ、それだけだと不完全なので、人間が確認・修正していくというハイブリッド方式で行っているというのが特徴です。大量の写真に人間がラベルをつけていくためには人を大量に確保する必要があり、人件費が安いアジアやアフリカの人々にオンラインで仕事を発注するネットワークを構築しています」
ラベリングに特化している会社というのは少ないのか。
「米アマゾン・ドット・コムなどは以前から自前でラベリングをやっていましたが、スケールAIは非常に大規模にラベリングに特化し、さらにAIを導入してハイブリッド方式でやっているという点が珍しいです。また、会社自体というよりも、CEOのアレクサンダー・ワン氏がAIのオピニオンリーダー的な存在として有名であり、世界最年少でビリオネアになったことでも知られています」(湯川氏)