●この記事のポイント ・7月2日から日本最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS」が京都で開催される。そのなかで今年の目玉のひとつが7つのテーマゾーン。本記事ではディープテックエリアの責任者にインタビュー。 ・異色の経歴を持つ藤本氏は、IVSが日本のスタートアップエコシステムに果たす役割は大きいと感じ、特にディープテックは社会課題の解決に寄与する可能性は大きいと語る。

 今年7月に開催される日本最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS」に、新たな旋風が巻き起こる。それが、今年新設される7つのテーマゾーンの一つ、「ディープテックエリア」だ。科学的発展と技術を基盤に、社会に大きなインパクトをもたらす「ディープテック」は、未来を切り拓く鍵となるだろう。

 そのディープテックエリアの責任者を務めるのは、異色の経歴を持つ藤本修平氏。理学療法士として医療現場で経験を積んだ後、ビジネスの世界で数々の新規事業を創出。現在は大学准教授と上場企業のオープンイノベーションパートナーを兼任する。そんな藤本氏の視点から見据えるIVSの見どころ、ディープテックの可能性、そして研究とビジネスの融合が社会にもたらす変革の最前線に迫る。

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臨床の現場からビジネス分野へ

 藤本修平氏は、理学療法士として7年間臨床に携わった後、ビジネスの分野に進出し、研究活動も継続してきた。現在は、静岡社会健康医学大学院大学で准教授を務める傍ら、株式会社メドレーのオープンイノベーションパートナーとしてスタートアップへのマイノリティ出資やアライアンスを担当。過去には医療メディアの立ち上げ、ヘルスケアアプリの開発、リハビリテーション施設の設立、介護AIの開発などを手がけた。

 藤本氏は、自身が社会課題の解決に取り組むディープテックに関心を寄せるきっかけとなった背景について、次のように語る。

「病院時代に、脳刺激により脳卒中患者の麻痺した感覚が改善する可能性を研究していました。論文が出た時はとても嬉しかったのですが、自分が所属する病院の医療従事者ですらもその論文を積極的に活用することはありませんでした。そこで、研究開発が社会に役立つために産業化または制度化に至らないと、救える人の最大化を目指せないことに気づきました。研究開発とビジネスを掛け合わせる、その領域に興味を持ったきっかけの一つです」

 IVSには昨年から参加し、今年はディープテック領域のディレクターに就任した。一口にディープテックといっても、受け取る人によってイメージするところは大きく異なる。IVSにおいて、ディープテックをどのように定義しているのか聞くと、藤本氏は「科学的な発展と技術に基づいて社会的に大きな影響を与えるもの」と語る。社会的に大きな影響には、ビジネス化、制度化などが含まれると考えられる。

 今回初めて創設されるディープテックエリアは、国がディープテックへの投資を強化している背景もあり、その存在自体が重要だと藤本氏は語る。「目玉セッション」は全てであり、こだわりとして大学研究者や起業を目指す人々など、真に研究開発と実装、産業化、制度化に今まさに取り組んでいる層に焦点を当て登壇者・テーマを選定している。

 ディープテックのセッションは、フードテックや医療テックなどの「領域別(バーティカル)」と、人材、金融、知的財産などの「共通課題別」の2つの軸で構成されている。また、領域別と共通課題別を包括する形で、日本版ディープテックエコシステムの議論を行うセッションも設けられている。本セッションは、ディープテック領域でより女性進出を推進したい考えやエコシステムのあり方を問うために、”女性のみの登壇者”にこだわりを持ったという。