とくに明確な傾向が見られたのが、縄張り意識の強い鳥たちです。

たとえば、シジュウカラの仲間やヨシキリのような種では、朝の時間帯に鳴き声が集中しており、自分のテリトリーを他の個体に示すための行動と考えられます。

ここで重要なのは、なぜ「朝一番」でそれを行うのかという点です。

鳥たちの縄張りは一度確保すれば永久に安泰というものではなく、周囲の個体は常に空白地や隙をうかがっています。

もし朝になってもその場所で声が聞こえなければ、「この縄張りは空いている」と判断され、侵入されるリスクが高まります。

そのため、夜明けとともにすぐさま鳴くことは、野生の世界における「おはよう」の一声ではなく、「ここはオレの場所だぞ」という宣言なのです。

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また、果実と昆虫を食べる雑食性の鳥──たとえばムクドリの仲間など──でも、朝の鳴き声が目立ちました。

これらの種は群れで採食する傾向があり、鳴き声が仲間への位置情報や採餌開始の合図、あるいは捕食者への警戒信号として使われている可能性があります。

一方で、主に果実のみを食べる鳥や、縄張りを強く主張しない鳥では、朝と夕の鳴き方に大きな差が見られないこともわかりました。

この結果からは、これまで有力とされてきた「環境要因説」は否定されます。

研究者が音響条件をほぼ同等に揃えた朝と夕方で比較しても、一部の鳥たちは朝のほうが明らかに鳴き声が多くなっていました。

つまり、朝の鳴きが多い理由を「声が通るから」などの環境要因とする説では、鳴く時間帯の違いをうまく説明できなかったのです。

また、同様に暗くて視覚的活動が制限されるために鳴いているという「視覚制限説」についても、夕暮れの薄明かりが似た条件であるにもかかわらず、朝に鳴き声が多い鳥がいたことから支持されにくくなりました。

加えて、ホルモンや体内時計による発声リズムという「生理説」も、種によって朝に鳴き声が多いものと、朝・夕で同じ様に鳴くものがいることから支持できません。