「朝チュン」。
そんな言葉が生まれるほど、鳥が早朝に鳴くイメージは広く知られています。
徹夜で作業をしたとき、外から聞こえる鳥の声で「もう朝かよ」と感じ取ったことのある人も多いでしょう。
では、なぜ野鳥の多くは朝早くから鳴くのでしょうか?
生物学ではこの疑問について、「空気が澄んでいて、声が遠くまで届くから」あるいは「まだ暗くて他にやることがないから」などの説が唱えられていました。
しかし、その説明は本当に正しいのでしょうか?
この素朴な疑問に対し、新たな角度から答えを導いたのが、アメリカのコーネル大学(Cornell University)の研究チームです。
彼らは、インドの西ガーツ山脈という自然豊かな地域で、実に69種もの野鳥の鳴き声を長期間にわたり調査し、新たな理由を報告しています。
この研究の詳細は、2025年6月に科学雑誌『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されています。
目次
- 鳥は朝の空気や太陽光に反応しているわけではなかった
- 鳥たちが朝さえずるのは戦略的な理由だった
鳥は朝の空気や太陽光に反応しているわけではなかった

これまで、鳥が早朝に鳴く理由については「環境的な要因」が中心と考えられてきました。
たとえば、夜明けは気温が低く空気が安定しているため、音が遠くまで届きやすいという音響伝播効率説(acoustic transmission hypothesis)。
また、朝の暗がりでは視覚が利きにくく、まだ採食も始められないので、他にやることがなくて鳴いているという視覚制限説(light-level constraint hypothesis)。
さらには、体内リズムやホルモンによって発声が促されるという生理的な説明もありました。
こうした仮説はもっともらしく聞こえますが、実はその多くが厳密な検証を経てきたわけではありませんでした。