オーストリアで最も古い名門貴族の一つ、シュターレンベルク(Starhemberg)伯爵家の地下室に眠っていた16〜17世紀頃の赤ちゃんミイラ

その死因は数世紀にわたって謎のままでした。

しかし独ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(LMU Munich)の2022年研究により、日光不足によるビタミンD欠乏症であったと解明されたのです。

またこれほど保存状態のよい同時代の幼児の遺体はほぼ類例がないことから、当時のヨーロッパ貴族の育児環境を理解する上で、きわめて重要なサンプルとなります。

研究の詳細は2022年10月26日付で学術誌『Frontiers in Medicine』に掲載されました。

目次

  • 地下室で発見された赤ちゃんミイラの正体とは?
  • 貴族特有の習慣が「日光不足」を招いていた?

地下室で発見された赤ちゃんミイラの正体とは?

男児のミイラは、オーストリア北部オーバーエスターライヒ州にある名門シュターレンベルク伯爵家の地下室で発見されたものです。

遺体は自然にミイラ化して枯れ果てていますが、全身が欠けることなく保存されており、精巧な絹の衣服も残っていました。

地下室には他に、当時の伯爵家の所有者とその妻の遺体が見つかっており、この男児は、2人の間の長男であった可能性が高いとのこと。

埋葬時、男児の年齢は生後わずか10〜18カ月でした。

男児のミイラ
男児のミイラ / Credit: Andreas G. Nerlich et al., Frontiers in Medicine(2022)

また皮膚サンプルの放射性炭素年代測定から、男児は1550〜1635年の間に埋葬されたことが特定されています。

ただし、伯爵家の記録から、地下室は1600年頃に一度改装されているので、それ以降に埋葬されたものと思われます。

残念ながら、男児の棺には碑文がなかったため、正確な名前や生年月日は不明ですが、家系図から判断して、ライヒャルト・ヴィルヘルム(Reichard Wilhelm)という名前だったと推定されています。