イラン航空はよく墜落するといわれてきた。当方の知人の一人、イラン出身の国連担当ジャーナリストは定期的に家族がいるテヘランに帰国するがイラン航空は使わず、トルコ航空経由で帰国するという。だから、ハメネイ師がロシアに亡命しようとした場合、命がけの逃避飛行となるのだ。イランに留まるのも危険、逃亡するのも命がけ、というのがハメネイ師を含むイランのエリート層の避難事情だろう。
ところで、イラン国民はどこに逃げることができるかだ。多くの国民は国内避難民として安全な地域を探すだろうが、外国まで逃避するケースもある。イランは東にはトルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタン、西にはトルコ、イラク、アゼルバイジャンやアルメニアと国境を接している。現地からの情報によると、イラクに逃げる国民が多い。イラクにはシーア派が多数いるからだ。アゼルバイジャンもシーア派国民が多いが、イスラエルとはここにきて関係が改善されてきたこともあって、イラン国民は躊躇するかもしれない。パキスタンは国境を閉鎖してイランからの避難民の殺到を回避している、といった具合だ。ちなみに、北はカスピ海、南はペルシャ湾だ。
ユダヤ民族はディアスポラで世界を放浪してきた。1948年、放浪しなくてもいい独自の国家イスラエルを建国した。ただし、周辺は全て反イスラエルを国是とするアラブ諸国だった。その構図もここにきて次第に変化してきた。
ユダヤ民族が忘れてはならないことは、イランがペルシャと呼ばれていた時代、ペルシャ王朝のクロス王がBC538年、ユダヤ民族を解放し、エルサレムに帰還させたことだ。クロス王が神の声に従ってユダヤ人を解放しなければ、現在のイスラエルは存在していなかっただろう(「旧約聖書「エズラ記」)。このコラム欄では何度か書いてきたが、イランのマフムード・アフマディネジャド前大統領が、「イスラエルを地上の地図から抹殺してしまえ」と暴言を発したこともあって、イスラエルとイランは常に対立してきたと考えがちだが、事実はそうではないのだ