この遺伝子組み換え酵母は、「Osteoyeast(”骨酵母”の意。本記事でもそう呼びます)」と名付けられました。

実験では、1リットルの尿から1グラム以上のHApが得られたと報告されており、この変換効率は今後研究が進むにつれて向上すると考えられます。

では、この新しい技術は、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

「骨酵母」によっておしっこがお金になる

新しく開発された「骨酵母」が、社会に与える影響は多岐にわたります。

まず、経済的なメリットです。

下水処理と同時に高価なHApが生産できるようになれば、処理コストを削減しながら収益も得られる「副産物モデル」が実現します。

研究チームは、サンフランシスコほどの規模の都市で、どれほどの経済効果をもたらすか分析しました。

その試算によると、製造コストは1キログラムあたり約19ドルであり、これをアメリカ市場で50〜200ドルで販売できると考えられます。

システム全体では、年間約140万ドル(約2億円)の利益を生み出すことができるのだそうです。

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おしっこがお金になる / Credit:Canva

次に環境面の利点も大きいです。

現在の尿処理は水やエネルギーを大量に消費しますが、この酵母を使えばそれらの負担を減らし、同時に尿から貴重なリン資源を回収できます。

さらに、この技術は宇宙開発分野への応用も期待されています。

宇宙のような閉鎖環境では資源の再利用が重要ですが、骨酵母なら尿から骨の材料を生成可能。

宇宙飛行士の健康管理にも役立つかもしれません。

「私たちの体から出た“廃棄物”が、未来の医療や環境保護を支える」

そんな発想の転換をもたらすこの研究は、今後のバイオテクノロジーと資源循環の融合に向けた重要な一歩といえるでしょう。

次にトイレに行くとき、ただ流してしまうのが少しもったいなく感じられるかもしれませんね。

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