つまり、「年収が高い人がモテる」のは、金銭そのものではなく、そこに至るまでのプロセスや資質すらも信頼の対象になっているのだ。その意味で、「結婚できるかどうかは恋愛力よりも経済力が左右する」というのは、単なる金銭的余裕の話ではなく、社会的に認められた個人の力が問われているということでもある。

また、そのような背景があるために結婚相手に求める条件の出発点が収入になり、いつの間にかパートナー選びにおいて収入という条件そのものが目的になってしまっているように見える。

このような事情で、非婚化の問題は一時的に金を配って解決できるようなものではない。しかも現在の少子化対策は、収入の低い独身から金を巻き上げて、それを独身ではない世帯に配る仕組みになっており、そもそも金を配る相手すら間違えている。

少子化対策を本気で考えるなら、まず出会いや恋愛の前に、若い世代が将来に安心感を持ち、生活の見通しを立てられる環境を整えることが何よりも大切だという、穏当な結論で結びたい。だが、そうした環境や意識を今の先進国で実現するのは簡単ではないだろう。

結婚の条件 小倉千加子(原著は2003年)

はっきり言えば人にはみな価格がついており、自分の価格に応じた相手が購入できるのだが、みな自分に貼られた値札を見ることができにくく、従って、自分が思っている「適当な相手」というのが、他人から見ればしばしば高望みであったり、「適当」を通り越して「夢のように非現実」…であったりしても、当の本人は気づかないという滑稽なケースが頻発している。