2024年、日本人の出生数は68万6061人。ついに70万人を割り込んだ。これは政府の予測より15年も早く、少子化の加速というより、政府の予想力そのものが破綻しているようにも見える。

よく指摘されるのが「子どもを産まない」のではなく、「結婚しない」人が増えたということ。コロナ後に婚姻数が戻ると楽観していた政府の見立ては外れ、未婚化は定着した。

経済成長も、社会保障も、この先ますます苦しくなるだろう。それでもなお、婚活支援やマッチングアプリに期待をかけるこの国の姿は、どこか現実から目を逸らしているように思える。

静かに、しかし確実に、社会の歯車がひとつ止まった音がする。

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しばしば耳にする「金がないから結婚できない」という未婚男性の訴えは、感情的なぼやきとして片づけられがちだが、統計を見るかぎり、これはかなり率直な実態認識でもある。特に年収300〜500万円のいわゆる中間層に属する若者の婚姻数と出生数の減少は著しく、ここ10年で6割以上が減っているという事実は重い。

参照:なぜ若者は結婚しないのか?「金がないから」説を裏付ける明確な根拠 荒川 和久

誤解してはならないのは、これは単に「お金がないから結婚できない」という話ではなく、「安定した将来の見通しが立たないから家庭を築く自信が持てない」という、もっと根の深い問題を含んでいるという点である。

高収入の男性が結婚しやすい、あるいは子を持ちやすいというのもまた統計的に明らかだ。しかしここで「女性が金目当てで結婚相手を選んでいる」といった通俗的な語りに回収してしまうのは浅はかである。つまり、偽相関とまではいえないが交絡因子を見落としている可能性が高いということだ。

実際には、ある程度の年収があるということは、それまでの人生で一定の努力を積み、信頼を勝ち取り、職場で成果を上げてきた結果であり、そこには当然、知識や責任感、対人能力といった人間的な要素が含まれている。