理論的には、脳からも大量のUPEが発生しているはず――なのですが、これまで人間の脳からUPEを検出することは技術的に困難でした。

そんな中、アルゴマ大学を中心とする研究チームが、ついに“その一筋の光”を捉えたのです。

脳が発する「光」の検出に初成功!

チームは今回、20人の健康な成人を対象に、特殊な装置を用いた実験を実施しました。

被験者は真っ暗な部屋に座り、頭には脳波計を装着。

その周囲には、光電子増倍管(PMT)と呼ばれる極微弱な光を検出する装置が配置されました。

そして被験者には、目を開ける/閉じる、あるいは音楽(120BPM)を聴くといったシンプルなタスクを行ってもらい、その間のUPEと脳波の変化を同時に測定したのです。

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調査のイメージ図/ Credit: Hayley Casey et al., iScience(2025)

結果は驚くべきものでした。

まず、脳からのUPEは背景光(周囲の空気中のノイズ)とは明確に異なる変動パターンを持つことが判明したのです。

とくに後頭部(視覚野)と側頭部(聴覚野)から検出された光は、安静時でも一定のリズムと変動性を示し、他の部位とは異なるスペクトル的特徴を持っていました。

さらに目を閉じたときに増える「アルファ波」と呼ばれる脳波の活動と、UPEの強さが同期していることも発見されました。

これはつまり、脳の電気的な信号(脳波)と、化学的な代謝反応(UPE)が連動していることを意味します。

この成果は、従来のfMRIやPETスキャンのような「重装備で高コスト」な装置を使わずとも、非侵襲・低刺激で脳機能の状態を“光”から読み取る可能性を示すものです。

研究者たちはこの新しい手法を「光脳波記録(photoencephalography)」と名付けました。

将来的には、この技術がうつ病やてんかん、認知症などの診断や、注意力や感情状態のリアルタイム把握にも応用される可能性があります。