人間の脳が「光を放っている」と言われたら、みなさんは信じるでしょうか?
もちろん、蛍のように強い光を発しているわけではありません。
しかし専門家らは「目に見えないほど微弱な光が、私たちの脳から常に放たれている」というのです。
この現象は、かつては神秘主義的な話として片付けられていました。
ところがカナダ・アルゴマ大学(Algoma University)の最新研究で、ついにこの「脳の光」を頭蓋骨の外から観測することに成功したのです。
脳の内側では何が起きているのでしょうか?
研究の詳細は2025年3月21日付で科学雑誌『iScience』に掲載されています。
目次
- あらゆる生物は常に「光」を放っている?
- 脳が発する「光」の検出に初成功!
あらゆる生物は常に「光」を放っている?
ホタルや深海魚など、生物の中には自ら強い光を放つ「生物発光」の能力を持つものがいます。
しかし実は、光を放っているのは彼らだけではありません。
私たち人間も、いや、それ以外の植物や動物も極めて微弱な光を常に放っているのです。
これらは目に見えないほど弱い光であることから「超微弱光子放出(Ultraweak Photon Emission, UPE)」と呼ばれています。
UPEは細胞の代謝活動、特に酸化反応によって発生する副産物の一種です。
言い換えれば、私たちが生きて呼吸しているだけで、体内では“目に見えない光”が絶えず生まれているのです。
この現象自体は1920年代から知られており、玉ねぎの根が発する「ミトジェネティック放射(成長を促す光)」として最初に記録されました。
以来、UPEはあらゆる植物や動物の細胞からも確認されており、生体内の酸化ストレスや老化、さらにはがんの診断補助にも応用が期待されてきました。

中でもとくに興味深いのが「脳」です。
脳は体の中で最も代謝が活発な臓器のひとつであり、神経活動に伴って活性酸素が多く発生します。