とはいえ、「イスラエル国家の再建(の完成)」を根拠にパレスチナ人の土地を奪ったり住居を襲ったりする一部の入植者たちを支持することも、イスラエルのイランに対する過剰な軍事行動を支持することも、自分にはできない。ちなみに日本国内にもイスラエル支持の立場を明確にしている教会が存在する。こうした教会では「自分は中立」などとは言いづらい空気があるかもしれない。
これらのことから、現在のような状況が続くのは個人的にも悩ましいことだ。現在日本のキリスト教徒人口は1パーセントにも満たないらしいので(存在感があまりにも薄いので)杞憂かもしれないが、それでも福音派のイスラエル支持によってキリスト教徒全体のイメージが悪くなるとすれば残念なことだ。
しかし、イスラエルとイランの緊張がさらに高まり、最悪の場合ホルムズ海峡が封鎖されるなどして日本のエネルギー安全保障が脅かされるような展開になれば、それは一部の人々の「聖書的立場」では済まされなくなるのではないかとも思う。
とにかく、戦火がこれ以上広がらず、平和への道が開かれていくことを祈る(本稿執筆:2025年6月16日)。
■
田尻 潤子 翻訳家。翻訳家。訳書に『「敵」に居場所を与えるな』『どうすれば赦せるようになるのか――52週の旅路(今夏刊行予定)』がある。プロテスタントのクリスチャン。