私は日本人ジャーナリストとして、米国内にある約10か所の国立研究所(DOE=米エネルギー省管轄)を複数回訪問。原爆と原発の両面から現地で取材を行ってきた。ロスアラモス、サンディア、パンテックスなどでは、B61-11に関する貴重な資料・写真・証言を収集している。
特筆すべきは、B61-11や同型地表貫通爆弾がB-2ステルス爆撃機とのセット運用を前提としている点である。イスラエルは過去20年にわたり、米国に対してこの兵器の供与と運用許可を繰り返し求めてきた。独自開発を試みたとされるが、実際の使用許可は米国が握っているという見方が根強い。
もちろん、核兵器の使用は国際社会の激しい非難を招く。現実的には「不可能」とされるが、仮にイスラエルが「国家の存亡に関わる」と判断した場合、たとえ米国の反対があっても(たとえばそれがトランプ政権であっても)、使用に踏み切る可能性は完全には否定できない。
サイバー戦と非軍事的選択肢
また、爆撃以外の選択肢にも注目すべきである。イランの核開発を一時的に麻痺させた実績があるのが、米国とイスラエルが共同開発したサイバー兵器「スタックスネット(Stuxnet)」だ。これはイラン・ナタンツの遠心分離機を物理的に破壊に導いたマルウェアであり、私も取材を試みたが、当事者への直接取材は極めて困難だった。
作戦の中心にはモサドが存在し、米NSAやイスラエルの電子諜報部門「ユニット8200」の協力があったことは確かである。今後も同様のサイバー攻撃が実施される可能性は高い。
アメリカの支持と「力の外交」の論理
一方、日本国内では「イスラエルが核兵器を保有しているのに、なぜイランの核保有を認めないのか」「なぜアメリカはイスラエルを支持し続けるのか」といった素朴な疑問も見られる。だが、これは国際政治の現実を知らぬ“こたつ評論家”の声にすぎない。
確かに、「国家も人間も平等であるべきだ」という理念は尊い。しかし、現実の国際政治において、それがそのまま通用するとは限らない。