このように男性と女性では「感じ方」や「求めていること」がまったく異なるということがおわかりいただけたかと思います。そこを理解せずに文章は成立しません。
たとえば、次のようなケースはいかがでしょうか。京都旅行に行ったときの出来事を男性思考でまとめたものです。
『東京十時発の新幹線に乗って、十二時に京都に着いた。昼食を食べて、金閣寺に行ったが、時間に余裕があったので銀閣寺まで足をのばした。十七時の新幹線で東京に向かった。』
これは単なる事象の報告にすぎません。
女性思考でまとめるとどうなるでしょうか。
『十時出発の新幹線だったので早起きしなければならなかったけれど、久々の旅でワクワクして目がさえちゃって、前の日はなかなか眠れませんでした。金閣寺に行って、紅葉を見ながら散歩しました。すごくきれいだったので、たくさん写真を撮っちゃいました。お昼には精進料理を食べたんですけど特にお野菜がおいしかったです。』
大きな違いは論理的か感情的かの差です。女性からしたら男性の話は、「へえー、それで?」と物足りなく感じるでしょう。一方、男性からすると女性の話は、「要点は何?」と思うかもしれません。
しかし、どちらが正しいということではありません。大切なのは、読者がどちらのタイプなのかを理解し、それに合わせた文章を書くことです。
ビジネス文書や報告書なら男性思考の論理的な書き方が適しています。しかし、エッセイやブログ、SNSの投稿なら、女性思考の感情豊かな書き方のほうが読者の心に響くことが多いでしょう。
優れた書き手は、この両方を使い分けることができます。時には論理的に、時には感情的に。読者や目的に応じて、自在に文体を変えられるようになることが、文章力向上への第一歩なのです。
あなたの文章は、誰に向けて書かれていますか? その答えが明確になれば、自然と適切な書き方も見えてくるはずです。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)