だがアメリカを除き、そのような影響力を行使できる国は、G7には一つもない、と言ってよい。アメリカは例外だが、逆にG7として行動する理由もないので、トランプ大統領は、サミット二日目の予定を切り上げてアメリカに帰国して、中東情勢対応にあたり始めた。
1975年にG7のグループが作られたとき、七カ国のGDPの総計は、世界経済において約63%を占めていた。現在は40%前後である。
購買力平価GDPでは、すでにBRICS五カ国のGDP総額は、G7七カ国のGDP総額よりも大きい。
また、20世紀末頃から、アメリカ一国のGDPが、その他の六カ国のGDPの合算額よりも大きくなり、その差は広がる一方である。
もちろんこの傾向の大きな理由の一つが、日本経済の停滞だ。とはいえ、欧州諸国の経済成長も、華やかなものではない。
日本ではG7を、いまだに「先進国」会議などといった言い方で呼ぶ悪習がメディアに残存している。しかし今年でなければ数年のうちに、中国に続いて、インドが、日本とドイツのGDPを上回り、アメリカ以外の全てのG7諸国のGDPを追い抜かすことが確実視されている。PWC等の予測によれば、2050年までに、購買力平価GDPで、インドネシア、ブラジル、メキシコが、日本よりも上位に来る。欧州諸国は、さらに多くの諸国に追い抜かされる。
恥を忍んで、G7の結束なるものを尊重して、二重基準の偽善者であることを世界に宣言することに加担するのも、全ては国益にかなうと思えばこそ、だろう。もちろんせっかくの歴史あるクラブなので、活かしきったほうがいいことは、言うまでもない。だがあらゆる犠牲を度外視してまで、G7の結束の誇示なるものに至上の価値を置く前時代的な態度は、かえって国益に反する。