G7カナダ・カナナスキス・サミットで発出された、イラン・イスラエルをめぐる共同声明が、批判を招いている。イスラエルの自国を守る権利を肯定して、その行動を支持すると、あえて宣言してみせたからだ。

G7カナナスキス・サミットHPより (3)

イスラエルのイランへの一方的な攻撃開始は、明白に国連憲章第2条4項の武力行使禁止原則に違反している。それにあえて支持を示した、ということは、日頃は法の支配だ人権だと「説教」がうるさいと評判のG7諸国が、「われわれは堂々と恥ずかしげもなく二重基準を掲げます」と世界に宣言したようなものなのだ。

巷では、厳密な国際法用語である「自衛権」(right of self-defense)を避けて「自国を守る権利」(right to defend itself)としたうえで、その語句には「肯定」(affirm)という語だけをかけただけで、「支持」(support)したのは「イスラエルの安全保障」だ、といったことを意味ありげに強調する方もいらっしゃるが、意味不明である。

そのような語句のわずかなずらしで、簡単に国際法規範を守らなくてもよくなる超越的な規範を作り出すことができるということになったら、事実上、いつでも国際法を守らなくて良いことになる。破綻した議論である。

ここではG7諸国がイスラエルに振り回される歴史的背景や、米国におけるユダヤ・ロビイストの存在など、深いが周知の事実と言える事柄には、ふれない。ただ指摘してきおきたいのは、G7諸国が、あえてこのような声明を出してみせる「勘違い」の態度だ。

黙っておいてもよかったものを、あえて「われわれは二重基準の偽善者です」という宣言を世界に示した。なぜそんなことをしてしまったのかというと、それをせめてイスラエルには伝えて、イスラエルへの影響力を確保しておきたかったからだろう。ひょっとしたら中東全域への影響力を確保しておきたい、などという勘違いの願望を持っていた国もあったかどうか。