預言を語る宗教家たちと広がる不安
この終末論を煽っているのは、一部の宗教家やインフルエンサーたちだ。聖書の預言と現代の出来事を結びつけることで知られるラビ、ジョナサン・カーンは、最近のビデオで次のように語っている。
「聖書には、終わりの日にはイスラエルが世界の焦点となると書かれている。イスラエルへの敵意が高まる場所で、四騎士の色が現れ始めた。これはすべてハルマゲドン(最終戦争)へと続く道の一部なのだ」
シアトルの牧師スティーブ・シオコランティもまた、パレスチナの国旗の色が四騎士と一致すると主張し、その説教はSNSで拡散された。「神が色を無作為に選ぶはずがない。私たちが見る色には目的とメッセージが込められている」と彼は語る。
さらに、ヨルダン、スーダン、UAE、リビア、クウェートといった周辺諸国の国旗も同様の配色を持つことから、これらの国々も聖書の預言と繋がっていると示唆している。
こうした言説は、過激な宗教団体や一部のSNSユーザーの間で主に広まっているものだが、イスラエルとイランの軍事衝突といった現実のニュースと相まって、人々の間に漠然とした不安感を広げる一因となっているようだ。

陰謀論の源流にある聖書解釈
では、なぜこのような解釈が生まれるのだろうか。その背景には、「ディスペンセーショナリズム」と呼ばれる聖書解釈の一派が存在する。これは、聖書、特に『ヨハネの黙示録』の記述を、未来に起こる出来事を文字通りに記した「ロードマップ」として捉える考え方だ。
『ヨハネの黙示録』は、使徒ヨハネが記したとされる新約聖書の最後の書物で、神が持つ「7つの封印」が施された巻物を子羊(イエス・キリストの象徴)が解き明かしていくという劇的な物語で始まる。封印が解かれるたびに、四騎士の登場をはじめ、殉教者の叫び、大地震、太陽が暗くなるなどの災いが次々と地上を襲う。
この黙示録の記述を現代に当てはめようとする試みは、中東の緊張が高まるたびに繰り返されてきた。現在の紛争が、本当に聖書の預言の成就なのか、それとも人々の不安が生み出した物語なのか。その答えは誰にも分からないが、世界が固唾をのんで中東の行方を見守っていることだけは確かである。
参考:Daily Mail Online、ほか
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