「地球は平面だ」「世界は密かに爬虫類人間に支配されている」――。世の中には、にわかには信じがたい、しかし熱狂的に信じられている陰謀論が数多く存在する。
なぜ彼らは、専門家や社会の大多数が否定する突飛な主張を、あれほどまでに確信するのだろうか? その謎を解き明かす鍵は、彼らの「過剰な自信」にあるのかもしれない。コーネル大学の最新の研究が、そんな興味深い事実を突きつけた。
陰謀論者の共通点は「根拠なき自信」
この研究は陰謀論を信じる人々の心理を理解するため、4000人以上のアメリカ人を対象に行われた。参加者たちは様々な認知テストを受けた後、「自分がどれだけうまくできたか」を自己評価した。
分析の結果、陰謀論を強く信じる人ほど、テストの実際の成績は低いにもかかわらず、「自分は非常によくできた」と思い込む傾向が強いことが明らかになった。つまり、彼らは自らの認知能力に対して「過剰な自信」を抱いているのだ。
研究チームは、この「過剰な自信」のスコアと、「月面着陸は捏造だ」「ワクチンは政府の陰謀だ」といった陰謀論への支持度を比較。その結果、両者の間には強い関連性が見られたという。
「みんなもそう思っている」という大きな勘違い
さらに、この研究はもう一つの衝撃的な事実を明らかにしている。それは、陰謀論を信じる人々が、自分の意見が多数派であると著しく勘違いしていることだ。
調査では、実際に陰謀論を信じていた参加者は全体のわずか12%だった。しかし、当の本人たちは「10人中9人は自分と同じ意見のはずだ」と信じ込んでいたのである。この心理は「偽の合意効果」と呼ばれ、特に「過剰な自信」を持つ人々の間で顕著に見られた。
研究者であるゴードン・ペニーコック准教授は、「陰謀論者の特徴は、単に信念の根拠が乏しいだけでなく、その信念に驚くほど自信を持っている点にあるようです」と語る。彼は、この過剰な自信こそが、人々を陰謀論の「ウサギの穴(一度ハマると抜け出せない深い世界)」へと引きずり込むのではないかと指摘する。
