AIを搭載した自動運転車がハッキングされ、遠隔操作の「自爆ドローン」として人混みに突っ込む――。まるでSF映画のような話だが、これは国連が真剣に警鐘を鳴らす、すぐそこにある未来の脅威だ。

 国連が発表した「アルゴリズムとテロリズム:テロ目的での人工知能の悪用」と題された報告書は、AI技術がいかに容易にテロの武器となりうるかを詳述し、西側諸国は「格好の標的」だと警告している。

人間は不要に?進化する「無人の爆弾」

 報告書が描く最も恐ろしいシナリオの一つが、AI搭載車両の兵器化だ。テロリストは、もはや自らの命を犠牲にする必要はない。ハッカーが自動運転車やトラックのシステムを乗っ取り、遠隔操作で人通りの多い場所に突っ込ませるだけで、大規模なテロ攻撃を実行できてしまう。

 国連テロ対策事務所は、「車両を使ったテロは昔からある手口だ。車の自動化が進むことは、テロ組織にとって極めて好都合な展開と言えるだろう。信奉者の命を犠牲にしたり、逮捕されるリスクを負うことなく、最も伝統的な攻撃を遠隔で実行できるのだから」と、その危険性を指摘する。

車両だけではない、都市を襲うAIの脅威

 脅威は自動運転車だけにとどまらない。報告書は、テロリストが顔認識ソフトウェアを悪用し、「スローターボット(殺戮ドローン)」と呼ばれる小型無人機の群れで特定の標的を襲う「スウォーム攻撃」の可能性にも言及している。

 さらに、病院のシステム、交通網、信号機といった都市の重要インフラをハッキングして大混乱を引き起こすことも可能になるという。私たちの生活を支える便利な技術が、一瞬にして牙を剥くのだ。

国連が警告する「無人自爆テロ」の恐怖… 顔認識で標的を襲う“殺戮ドローン”と“自爆AIカー”が都市を襲う日の画像2
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI))

専門家が語る「5~10年後の現実」

 この悪夢のようなシナリオは、決して遠い未来の話ではない。

 国際警察・公共保護研究所のウィリアム・アルコーン上級研究員は、「ハッキングされた、あるいは自作の自動運転車を使った協調攻撃が、今後5年から10年の近い将来に発生する可能性は『中程度以上』」と断言する。そして、「各国の安全保障機関は、この脅威を真剣に受け止めるべきだ」と強く訴えている。