「押してダメなら引いてみろ」「北風と太陽」といった表現があるように、物事は力技だけでは解決しない。時には柔軟な発想こそが、何倍もの力を生むのだ。

X上では、「誤表記」にも見える注意書きの真の意図に対し、「素晴らしい」と称賛の声が相次いでいたのをご存知だろうか。

■ATMに貼られた注意書き、その内容は…

今回注目したいのは、文化人類学者・早川公さんが投稿した1件のポスト。

「郵便局のATMにあったこの注意書き、唸らされた。考えた人頭良い」と意味深な内容が綴られた投稿には、ATM脇に貼り出された注意書きの写真が添えられている。

その内容は「このATMは医療費還付手続きに対応しておりません。恐れ入りますが、インターフォンでおたずねください」というものであった。

■「全てのATMに貼ってほしい」の声も…

一見すると何の変哲もない注意書きに思えるが、同ポストは投稿から数日足らずで、なんと1万件以上ものリポストを記録するほど大きな話題に。

Xユーザーからは「全てのATMに貼り付けてほしい」「この発想は無かった。目から鱗」「ATMの開始画面に、この文言を表示できないかな?」「ウソをついてないので、騙していないのがポイント高い」など、称賛の声が相次いでいた。

ポスト投稿主・早川さんに話を聞いたところ、こちらの張り紙は都内某所にある郵便局のATMで発見したと判明。発見時、早川さんは「そうきたか、確かに詐欺だと思わないから振り込むんだもんね」とも感じたそうだ。

郵便局のATM
(画像=『Sirabee』より引用)

さて、読者諸君は張り紙の違和感に気づけただろうか…?

■被害者は「詐欺に遭ってる」と気づかない

当たり前の話だが、詐欺の被害に遭っている人物は「自分が詐欺に遭っている」などと、気づいてはいない。それどころか「自分が詐欺に遭うはずがない」という、根拠の無い自信をすら持っているのだ。

そのため、たとえ振り込め詐欺の被害に遭っている真っ最中でも、ATM付近に多数貼られた「詐欺に注意」といった文言は他人事に感じられる。…いや、視界にすら入らない。そこで機能するのが、今回のような張り紙というワケである。

ここで、一般社団法人「全国銀行協会」が注意喚起している「還付金詐欺」の手口を見てみよう。

ポイントは大きく分けて、「市区町村や年金事務所の職員などを装って電話してくる」「『還付金を返す』と言葉巧みにATMへ足を運ばせ、お金を振り込ませる」の2点。しかし、実際はATMでは「還付金の受け取り」そのものが不可能である。