一方で、以下のような行動はむしろ増加していました。

・家庭の光熱費への支出が5.1ポイント増加

・動物保護団体などへの寄付が1.1ポイント増加

・暗証番号(PIN)の再設定やカード紛失の報告が顕著に増加

これらはすべて、日々の生活のなかで当人や周囲が「気づきにくい変化」でありながら、確実に金融的な判断力や注意力の衰えを映し出していたのです。

研究者らは「外出や趣味といった社会的活動への関与が減り、自宅にこもる傾向が強まることが、認知機能低下の表れ」と解釈しています。

それにより、光熱費などが増加しやすくなったと考えられます。

認知症と診断される10年前から異変が?

画像
Credit: canva

本研究では「詐欺被害の報告数の増加」や「暗証番号(PIN)リセットの頻度上昇」など、金融的なミスや脆弱性の兆候も明らかになっています。

とくに驚くべきは、こうした異変が、正式に認知症と診断されて治療介入が始まるより最大10年前から少しずつ始まっていたという点です。

つまり、家族や医師が気づくよりもずっと早く、銀行のデータ上には“異常”が現れていた可能性があるのです。

これを受けて研究主任のジョン・ギャザーグッド教授は次のように語っています。

「社会として、もっと早くから金融能力の喪失リスクに気づき、支援を始める必要があります。銀行が持つ行動データは、早期発見の鍵になり得るのです」

もちろん、個人のプライバシーやデータ利用の倫理的配慮は欠かせません。

しかし、もしも適切な制度設計と運用ができれば、銀行データという場所が未来の認知症予防の最前線になるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Banking data reveals early warning signs of cognitive decline in older adults
https://medicalxpress.com/news/2025-06-banking-reveals-early-cognitive-decline.html