
mapo/iStock
先週、やり取りをさせていただいた北品川にある18年連続ミシュラン三ツ星という日本を代表する人気店のオーナーシェフは、人気と地位に安住することなく、ストイックにお店の経営に専念していることに感銘を受けました。
その一方で、飲食店のオーナーシェフは人気店になると劣化していってしまうことも多く、残念な気持ちになることも珍しくありません。
その原因はお店側だけではなく利用するお客の側にもあるように思います。
例えば、突出したお料理をリーズナブルに提供するお店がオープンするとすぐに飲食の専門家の間で話題となり、グルメサイトの著名レビュアーなどもやってきて絶賛するレビューがアップされるようになります。
著名な人が絶賛すると同調圧力がかかり、誰も批判できなくなってしまうのです。
特にシェフが若くてイケメンや美女で有名店で修業していたといった華麗な経歴があると、それによってその評価はさらに上がっていきます。
そのうちに予約の取れない有名店となって、来店客は常連がほとんどとなり内輪で盛り上がるようなお店に変わっていきます。常連客同士で高いワインを入れたり、特別なコースを作ってもらうといったマウンティングが始まって本来の味とは違った方向になっていってしまうのです。
客が料理人を甘やかし、勘違いした料理人が「裸の王様」になってしまうパターンです。
また、お店が終わってから常連客と深夜に飲みに出かけたりすれば、本業にはマイナスの影響となってしまいます。さらにメディアの取材や食品会社の商品開発の監修など関連する仕事が広がれば広がるほど、見聞を広げられるメリットもありますが、本業に割ける時間は減っていきます。
当初の高い評価も、価格に対して提供するお料理やサービスのクオリティが伴わなくなれば、いつしか常連も離れていきます。
世の中の飲食店に求める味やサービスも時代と共に変わっていきます。3年前には魅力的だった内容であってももはやそれほどの価値は無いというくらいの進化をしているのです。その流れについていけなければ人気店から消えていく運命にあります。