全数把握が終わった2023年5月でもコロナ死者数は、累計で約7万5000人。3年たっても42万人にはるかに及ばないが、西浦氏はその再検証も反省もしない。
ワクチンは「有害有益」だった2021年から状況は変わった。マイナスだった超過死亡が、ワクチン接種が始まった5月からプラスになったのだ。これを説明するシンプルな仮説は、仁井田浩二氏のようにすべて直接・間接のコロナ死者だったと考えることである。
図2 超過死亡数とコロナ死者数
コロナ以外に大きな感染症や災害は起こっていないので、この推論は論理的には成り立つ。図2のようにコロナ死者数(青い線)を3倍すると、超過死亡数(赤い棒グラフ)とほぼ同じで、時系列も一致している。
このときワクチンの副反応が疑われたが、結果的には接種数と超過死亡数には(2022年初めを除いて)強い相関はない(図3)。
図3 超過死亡数とコロナ死者数とワクチン接種数(neko-inc)
ただ3億回のワクチン接種による接種後死亡報告数は約2000人で、予防接種の安全基準(100万接種で死者1人以内)を上回っている。尾身氏は「因果関係が否定できないのは2人だけ」と説明したが、死亡直後に検査しないと死因は確定できない。
しかしワクチンの副反応だけでは、2020年以降の超過死亡数21万人は説明できないので、高齢のコロナ死者は増えたと思われる。ワクチンが重症化を防ぐ効果も多くの臨床試験で明らかだから、ワクチン接種は有害有益だったといえよう。
コロナ対策の費用対効果を再評価するとき問題はこの費用対効果をどう考えるかである。単純にワクチン接種なしだったら死者が増えたか減ったかという基準で考えると、図2のように少なくとも2021年(デルタ株)にはワクチン接種で超過死亡は減ったと考えられる。
しかし2022年(オミクロン株)から感染者と死者が激増し、日本の超過死亡率は他の先進国より高くなったが、ワクチン接種回数との相関は強くない。圧倒的に強いのはコロナ死亡率との相関で、