ハメネイ師体制の崩壊はその経済的な恩恵を受けてきた聖職者、軍人、国民にとって存続の危機を意味する一方、絶望的な貧困化にある大多数のイラン国民には聖職者支配体制からの解放となる。
最後に、ハメネイ師体制の崩壊のシナリオについて少し考えてみたい。トランプ氏はイランの体制転換が中東全域を不安定にし、新たな戦争や紛争をもたらすことを恐れている。トランプ氏は戦争を嫌っている。だから、同氏はロシアのプーチン大統領に電話し、イスラエルとイラン間の戦争を終結するためにロシアの仲介を打診しているほどだ。それではイスラエルが米国の関与なく自力でイランの現体制を崩壊させるというシナリオはどうか。中東では過去、米国の関与なくして戦争や紛争が終結したことがないのだ。また、イスラエル側には、ポスト・ハメネイの明確なビジョンがない。イラン国内からの体制改革の動きはどうか。残念ながら、シリアのように武装した反体制派組織はイランには存在しないのだ。
以上、少し時間がかかるが、イスラエル軍の攻撃で国力を失った現イラン体制と米国が交渉を再開し、イランの核問題と制裁解除問題で双方が妥協を探る道が現時点では最も好ましいのではないか。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年6月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。