イランを取り巻く政治・経済情勢は厳しい。イランは、宿敵イスラエルを打倒するためにこれまでパレスチナ自治区ガザを実効支配してきたイスラム過激派テロ組織「ハマス」、レバノンの民間武装組織ヒズボラ、イエメンの反体制派武装組織フーシ派に軍事支援してきた。同時に、シリアのアサド政権に対してもロシアと共に軍事支援してきた。しかし、ハマスはイスラエル軍の報復攻撃を受けてほぼ壊滅状況だ。ヒズボラはイスラエル軍によって最高指導者ナスララ師が殺害され、統制が難しくなってきた。そしてロシアと共に軍事支援してきたシリアのアサド政権は昨年12月、崩壊したばかりだ。すなわち、ハメネイ師とIRGCが裨益する国民経済を無視して、外国のイスラム過激派テロ組織を支援してきたが、その結果は無残なものに終わろうとしているのだ。

外的には1979年のイラン革命から始まった聖職者支配体制は終焉を迎えようとしている。そこでイスラエル軍の「ハメネイ師殺害計画」が飛び出してくるわけだ。イスラエル軍は昨年9月27日、イランが軍事支援するレバノンのシーア派武装勢力「ヒズボラ」の最高指導者ナスララ師を殺害している。聖職者とはいえ、軍部と連携してイスラエルを攻撃する指導者に対しては容赦なく殺害してきているのだ。

一方、イスラエルの最大の同盟国・米国のトランプ大統領はイランとの協議に拘っているが、イランは今米国との交渉を再開したら、米国側が要求する濃縮ウラン活動を全面的にストップしなければならなくなる。そうなればイラン指導部のメンツはなくなる。だから、現時点では米・イラン両国核協議の再開は難しいわけだ。

ところで、イランの企業は80%が国有企業だ。経済の大部分は、政府、宗教団体、軍事コングロマリット(複合企業)によって支配されており、純粋な民間企業はほとんど存在しない。そして最高指導者ハメネイ師は数十億ドル規模のコングロマリットを率いる中心的人物でもあるのだ。ハメネイ師の経済帝国は石油産業から電気通信、金融、医療に至るまで、経済の多くの分野をその管理下に置いている。また、イラン革命防衛隊も石油とガス産業、建設と銀行だけでなく、農業と重工業にも組み込んでいるコングロマリットを所有している。要するに、ハメネイ師を筆頭としたイランの聖職者体制は同時に、同国の経済を完全に掌握しているのだ。