●この記事のポイント ・すでに「イオンネットスーパー」を展開するイオン、23年7月に新たなネットスーパー「Green Beans」を開始 ・物流拠点から発送するため、コールドチェーン、温度管理を徹底できるというメリット ・現拠点1つで一般の食品スーパー50店舗分の出荷量に相当
大手スーパーのイトーヨーカ堂が自前での事業運営から撤退するなど、競争が激化しているネットスーパー市場のなかで、イオンが勢いづいている。イオンは2023年7月に倉庫出荷型のネット専用スーパー「Green Beans」を開始。現在は物流拠点の誉田CFC(顧客フルフィルメントセンター)から東京23区と千葉・神奈川の一部エリアに配送している。会員数はリリースから1年8カ月で50万人を突破し、順調に伸びているという。新たに2拠点の設置も決まり、首都圏での配送エリアを拡大する予定だ。だが、イオンは2008年に店舗出荷型の「イオンネットスーパー」を始めており、すでにネットスーパーには参入していたはずだ。イオンネットスーパーはほぼ全国で対応している。イオンはなぜ、新たにGreen Beansを始めたのか。Green Beans事業を運営するイオンネクスト株式会社の担当者に取材し、その目的とサービス内容を聞いた。
●目次
食品ECは伸びる余地がある
ネットスーパーは文字通り、ネットを通じて注文し、商品を配送してもらうサービスのことだ。商品構成は食品スーパーと同様、食料品や飲料が中心である。国内では主に2010年代以降、小売各社が参入している。発送拠点によって2つのタイプに分かれる。スーパーやコンビニなどの実店舗から発送する「店舗出荷型」と、巨大な物流拠点から発送する「倉庫出荷型」だ。
イオンは2008年に店舗出荷型の「イオンネットスーパー」を始めた。イオン北海道が異なる名称で展開しているが、これを含めればほぼ全国で対応している。一方でGreen Beansは23年に始めたばかりであり、配送拠点が誉田(千葉市)の1拠点しかまだない。なぜ倉庫出荷型ネットスーパーを始めたのだろうか。
「ECは肥大なマーケットです。しかし食品に関しては、米中のEC化率が10%を超える一方、日本のEC化率はその半分以下しかありません。諸外国のように日本のネットスーパー市場も伸びる余地があると想定されます」(担当者)
EC化率とは、全取引に占めるECの割合のことだ。アメリカも以前は数%程度しかなかったが、コロナ禍で急激に伸びた。
「倉庫出荷型は千葉にある拠点1つで一般の食品スーパー50店舗分の出荷量に相当します。また、最大50,000品目の商品まで取り扱いが可能です」(同)
Green Beansでは現状約3万品目を扱うが、拠点は5万品目分のキャパシティがあり、商品構成も拡大の余地がある。ちなみに一般的な食品スーパーの商品数は1万~2万前後といわれる。