●この記事のポイント ・しゃぶ葉の人気の秘密は、しゃぶしゃぶをはじめバラエティ豊かな料理を低価格で味わえる食べ放題コース ・手軽に多種の野菜をたっぷり取れる料理としてのしゃぶしゃぶを求めて多くの人々が集まるための仕掛けが随所に施されている ・高額コースであれば、高級店にある程度近いものを格安といっていい価格で気軽に楽しむことができる
「中高生の間でブーム」「神コスパ」などとメディアで取り上げられる機会も増え、今ホットな外食チェーンの一つといえる、しゃぶしゃぶ食べ放題チェーン「しゃぶ葉」。平日ランチの食べ放題コースは1000円台で、肉のしゃぶしゃぶ、野菜、サラダ、うどん、ご飯、ラーメン、カレー、クレープなどのデザートが食べ放題で、なんと時間は無制限(店舗や入店時間によって異なる)。仮に午前11時からランチ終了時間の16時までいれば、5時間食べ続けられることになる。そんな「しゃぶ葉」を初めて訪問した料理人・飲食店プロデューサーで南インド料理「エリックサウス」総料理長の稲田俊輔氏がX(旧Twitter)上に投稿した“体験レポート”が、少し前に話題になっていた。X上で「しゃぶ葉」を「天国」「神よ」と表現していた稲田氏に、プロの目線から「しゃぶ葉」の人気と強さの秘密を解説してもらう。
●目次
日常的なおいしさとしては十分以上のものがある
すかいらーくホールディングス(HD)が全国に約300店を展開する「しゃぶ葉」は、店舗数ベースではしゃぶしゃぶチェーン業界1位。かつては1位だった「しゃぶしゃぶ温野菜」(217店舗/2024年9月時点)は近年、店舗数が減少して2位、「木曽路」(126店舗/同)が3位となっている。
しゃぶ葉の人気の秘密は、しゃぶしゃぶをはじめバラエティ豊かな料理を低価格で味わえる食べ放題コースにある。たとえば平日ランチは「牛&豚 しゃぶしゃぶ食べ放題コース」(2089円/税込/店舗によって異なる)は牛肉・豚肩ロース・豚バラ肉・鶏肉のしゃぶしゃぶに加え、前述のサイドメニューも充実。このほか、1000円台のコースとして「豚 しゃぶしゃぶ食べ放題コース」(1759円)、「豚バラ しゃぶしゃぶ食べ放題コース」(1539円)を提供。このほか「国産牛 しゃぶしゃぶ食べ放題コース」(3189円)などワンランク上のコースもあり、こちらは国産牛・赤城山麓豚・牛みすじ・小籠包・牛肉・豚肩ロース・豚バラ肉・鶏肉などが食べられる。平日は16時までなら時間無制限だという点も特徴だ。
ちなみに前述のとおり、中高生の利用客が増えているという言われ方が目立つが、すかいらーくHDは「ご来店いただいているお客様層の分析では、中高生のお客様に限らず、全世代のお客様が増加傾向にございます」と説明する。
しゃぶ葉は外食チェーンとして、どのような点が優れているか。前出・稲田氏は次のように説明する。
「肉の質と種類により、コースは平日ディナーで2000~4500円程度の間で細かく分かれています。ただし高額なコースは限定メニューとなっており、レギュラーメニューの最高額は3500円程度となります。初回訪問時、私は『北海道産牛肩ロースのコース』(4289円)を注文しましたが、肉質の良さは驚くべきものでした。黒毛和牛でこそありませんでしたが、おそらくF1(交雑)牛でしょう。サシの入り方こそやや弱いものの、味わいや風味は限りなく和牛に近いものでした。ビュッフェ業態におけるコストパフォーマンスを語る上で『元が取れるかどうか』を云々するのは、そもそもナンセンスではありますが、このコースの場合、ややもすると本当に『元が取れて』しまう可能性すらあります。F1牛は黒毛和牛よりは安いとはいえ、上質なものになると、小売りではそれほど大きな価格差があるわけではありません。
後日、改めてほぼ全種類の肉を食べてみました。コースごとの細かい価格差は選べる肉質の差をそのまま反映しており、当然ですが高ければ高いほど上質。その差は歴然としています。ただし豚肉にせよ牛肉にせよ、最低額のものであっても、日常的なおいしさとしては十分以上のものがあるのも確かです。最もコストパフォーマンスが高いのは、国産牛が選べる高額コース、もしくは反対に豚バラのみの最低額コースだと感じました。もっともこれは、この店にどういうスタイルを求めるかの話でもあり、人それぞれとしか言いようがないところでもありますが」