2025年3月、コロンビアのブガで発見された一つの金属球が、世界のUFOコミュニティを熱狂させた。通称「ブガの球体」。目撃者のドン・ホセ氏が撮影した映像には、空を奇妙に動き回り、地上に降りてくる謎の球体が映っていた。
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この球体をめぐっては、「触れた水を蒸発させる」「重さが変わる」「人を病気にする」といった、にわかには信じがたい噂が飛び交った。推進装置も見当たらないその姿から、地球外の未知のテクノロジーではないかという期待は高まるばかり。やがて球体は、メキシコの著名なUFO研究家ハイメ・マウサン氏の手に渡り、科学的な分析が行われることになった。
しかし、このほど公開されたメキシコの最高学府による詳細な分析レポートは、多くの人々の期待とは全く異なる、驚くべき結論を突きつけたのである。
メキシコ国立自治大学(UNAM)の鑑定結果
分析を担当したのは、ラテンアメリカ屈指の名門、メキシコ国立自治大学(UNAM)の材料研究所だ。マウサン氏が公開したレポートは、公証役場で「原本の忠実な複製である」と認証された51ページにわたる詳細なもの。その内容は、これまでの超常的な憶測を一蹴するものだった。
レポートは、査読を経た学術論文ではないものの、公式なロゴや連絡先が記載されており、大学の設備を用いて正式な手続きで分析が行われたことを示唆している。ただし、実験環境の詳細な記述がないなど、いくつかの疑問点が残ることも事実だ。それでも、報告された内容は具体的かつ科学的なものだった。

球体の正体は「光ファイバー入りのアルミ合金」
大学の研究チームは、硬度測定、磁場測定、金属組織の顕微鏡観察、化学成分分析など、多角的な調査を行った。そして、その正体が次々と明らかになっていく。
磁気はゼロ :まず、球体の表面からは一切の磁場が検出されなかった。強力な磁石を近づけても全く反応せず、内部に磁気を帯びた部品がある様子もなかった。
ごく普通のアルミ合金 :X線を使った化学分析の結果、球体の主成分は「アルミニウム・シリコン合金(A413など)」であることが判明した。これは、自動車部品などにも使われる、ごくありふれた工業用の金属である。
製造方法は「鋳造」 :顕微鏡で金属の内部構造を調べると、金属を溶かして型に流し込む「鋳造」という方法で作られた痕跡が見つかった。しかも、部分的に気泡のような欠陥が多く、製造品質にはばらつきがあったようだ。
謎のピンの正体 :最も注目された中央部分の「ピン」は、なんと「光ファイバー」を「ベークライト(初期のプラスチックの一種)」で固定したものであることが特定された。
熱に弱い :さらに、このベークライト部分は70℃を超えると劣化し始める(溶け始める)ことが判明。これは球体が高温に耐えられないことを意味し、大気圏再突入を経て飛来した物体である可能性を完全に否定するものだ。
