長年、世界中の人々を魅了し、時に恐怖させてきたUFOの謎。特に米軍の秘密基地「エリア51」を巡る陰謀論は、数々の映画やドキュメンタリーの題材となってきた。しかし、その神話の多くが、実はペンタゴン(米国防総省)自身によって仕組まれた、壮大な情報操作だったことが、最近の調査で次々と明らかになっている。
だが、これは物語の終わりではない。過去の「嘘」を認める一方で、ペンタゴンは今、より巧妙な手口で「不都合な真実」を覆い隠そうとしているのかもしれない。これは、情報公開という名の新たな隠蔽工作の始まりなのだろうか。
「UFOはいる」―秘密兵器を隠すための壮大な自作自演
米国防総省内に設置された専門調査チーム「AARO(全領域異常解決局)」の報告書は、衝撃的な事実を暴露した。冷戦時代、ペンタゴンは自国の最新鋭兵器開発を隠蔽するため、意図的にUFOの噂を煽っていたというのだ。
その手口は狡猾だ。例えば1980年代、ある空軍大佐はエリア51近くのバーを訪れ、客たちにUFOの写真を渡して回った。「この辺りで撮られたものだ」と囁きながら。もちろん写真は偽物だ。しかし、その写真はすぐさま店の壁に飾られ、「エリア51にはエイリアンの技術が隠されている」という憶測を一気に広める起爆剤となった。
当時、エリア51ではステルス戦闘機のような極秘兵器の試験飛行が繰り返されていた。上空に奇妙な飛行物体が目撃されるのは当然のこと。その目撃情報を「エイリアンの仕業」というファンタジーにすり替えることで、ペンタゴンはソ連をはじめとする敵国のスパイや、詮索好きな自国民の目から、国家の最重要機密を守り抜いたのである。

軍内部に蔓延した「エイリアン研究」という名の悪ふざけ
この情報操作は軍の内部にまで及んでいた。しかも、それは「ヘイジング(新入りいじめ)」という、信じがたい形で行われていた。
AAROの調査によれば、「ヤンキー・ブルー計画」と呼ばれる架空の極秘プロジェクトが存在したという。新しく着任した司令官は、この計画について説明を受ける。内容は「地球外生命体の乗り物の研究」。彼らは偽のUFO写真を見せられ、「この情報を漏らせば投獄、あるいは処刑される」と固く口止めされた。
この悪ふざけは数十年にもわたって続けられ、騙された軍人は数百人にのぼると見られている。彼らは退役後も、それが国家の最高機密だと信じ込み、固く口を閉ざし続けた。この常軌を逸した慣習に終止符が打たれたのは2023年になってからのことだったという。