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グリーンカーボン(Green Carbon株式会社:東京・千代田)は三菱UFJ信託銀行と共同で、フィリピンでのJCM(Joint Crediting Mechanism:二国間クレジット制度)組成に向けた実証実験を開始すると発表した。JCMは、先進国と新興国が協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減成果を両国で分け合う制度だ。つまり、先進国が新興国の温室効果ガス削減プロジェクトに技術や資金を支援し、その結果生じたCO2排出削減量を、貢献度合いに応じて両国で配分する仕組みである。
今回の場合、日本が持っている脱炭素技術等の普及を通じて、フィリピンの温室効果ガス排出削減に貢献し、その削減分を両国の削減目標の達成に活用することになる。グリーンカーボンの大北潤社長は、6日に行われた説明会で「10年間で合計100万トン超の創出を目指す」とした。三菱UFJ信託は創出した排出枠を日本の企業などに売却する。また、将来的には売却の収益をもとにした金融商品の組成も視野に入れる。
カーボンクレジット創出が必要な理由と市場の実態
パリ協定をうけ、日本は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、いわゆる「2050年カーボンニュートラル」の脱炭素社会を目指している。しかし、国内93%の企業が自社だけでは達成できないとしている。そこで、一部企業は他の企業などから「排出枠」を購入する必要がある。カーボンクレジットは、企業間などで温室効果ガスの排出削減量を売買できる仕組みのことだ。
2023年10月、上場企業などがカーボンニュートラルを目指すための話し合いの場として「GXリーグ」を設立し、そこで自主的なGX-ETS(排出量取引制度)を試行的に開始した。そして、法改正により2026年度から、CO2排出量が年間10万トン以上の企業に対し、排出量取引制度への参加が義務化された。約300~400社が対象になると見込まれている。
大北社長はカーボンクレジットの市場動向についてこう話す。
「GX-ETSに使えるクレジットは、国内で使われるJ-クレジット制度とJCMの2つです。J-クレジットは日本政府が認証するもの。カーボンクレジットの市場価格は右肩上がりにずっと上昇していたのですが、義務化が発表されてからは2倍まで一気に上がりました。今は調達が難しい状態になっています」
需要に対して現在のクレジット創出は絶対量が不足しているが、日本は国土が狭く、カーボンクレジットを創出する面積が限られている。そこで、海外の提携国から輸入しようというのがJCMだ。日本政府はJCMの加盟国を広げるべく新興国と協議しており、各国とパートナー関係を構築することでJCMの運用がなされている。今年5月までに30カ国と署名を交わしており、世界でトップの提携数だ。