また、ブラジルサッカー界の育成環境も影響している。近年、ブラジルの育成年代での競争力低下は顕著で、2024年のパリ五輪では南米予選で敗退した。これが影響して指導者の育成も停滞。宿敵のアルゼンチンが優れた指導者を次々と輩出するのに比べ、ブラジルは指導者育成システムが不十分との声が上がっている。

さらに、ブラジル国内リーグのクラブは財政難にありながら、サポーターは短期的な結果重視の傾向があり、監督に長期的なプロジェクトを任せにくい環境に置かれている。ブラジルサッカー連盟(CBF)の監督選考プロセスも一貫性を欠き、メディアやファンの圧力が強いため、ブラジル人監督が安定して実績を積むのが難しい状況となっている。


ブラジル人監督の“凋落”は、外国人監督ブーム、戦術トレンドへの適応の遅れ、育成環境の停滞、代表チームの不振、構造的課題が複合的に影響した結果と言える。

アンチェロッティ監督が代表指揮官に就任といった思い切った改革への動きがあるものの、ブラジルサッカーの復活にはある程度の時間がかかるだろう。アンチェロッティ監督とブラジルサッカー連盟との契約は1年(2026北中米W杯終了まで)とされているが、結果次第では契約延長の可能性もあるという。

一朝一夕には変わらないだろうが、ブラジルサッカー界は自国の指導者育成の強化を進めなければ、ブラジル人監督が日の目を見る可能性はさらに遠ざかってしまうだろう。