国内外にたくさんのFX業者があるなかで、どの業者を選べば良いのか迷う方も多いだろう。海外FX業者と国内のFX業者の違いや傾向を、取引方法や利用できるツールなどの10の項目に分けて紹介する。代表的なメリット・デメリットについても触れるので、FX口座開設の参考にして欲しい。

目次
1,海外FX業者と国内FX業者の10の違い
2,海外FX業者と日本FX業者どちらがいいのか?
3,好みや使い勝手によって納得できるFX会社を選ぼう

1,海外FX業者と国内FX業者の10の違い

海外FX業者2社(Axiory、XM)と国内FX業者2社(SBIFXトレード、GMOクリック証券)の違いをレバレッジやスプレッド、ゼロカットシステム(口座残高以上の損失が生じたときにFX業者が損失を負担するシステム)の有無など10の項目から比較してみた。各項目については、以下で詳しく解説する。

海外FX業者 国内FX業者
Axiory XM SBI
FXトレード
GMO
クリック証券
レバレッジ 400:1 888:1 25:1 25:1
スプレッド USDJPY:1.4
EURJPY:1.2
USDJPY:0.1
EURJPY:0.3
USDJPY:0.00-0.09※
EURJPY:0.28-0.60※
USDJPY:0.2
EURJPY:0.5
ゼロカット
システム
取引方法 NDD NDD DD NDD
取引ツール ・MetaTrader4
・cTrader
・MetaTrader4
・MetaTrader5
・リッチ
クライアント版
・WEB版
・新スマホアプリ
・スマホアプリ
・スマホアプリ
・デスクトップ専用アプリ
・ブラウザ
インストール型ツールバー
・AndroidWear専用アプリ
・ブラウザ取引
・プラチナチャート
取り扱い
通貨数
61ペア 57ペア 34ペア 20ペア
口座開設
書類
・本人確認書類
・現住所確認書類
・本人確認書類
・公共料金の請求書
・本人確認書類
・マイナンバー通知書類
・本人確認書類
・マイナンバー通知書類
税金 総合課税 総合課税 申告分離課税 申告分離課税
入出金手段 ・国内銀行送金
・国際銀行送金
・クレジットカード
・デビットカード
・STICPAY
・仮想通貨
・VLoad
・NETELLER
・Skrill
・国内銀行送金
・海外銀行送金
・クレジットカード
・電子決裁
・銀行振込
・インターネットバンキング
・クイック入金
・銀行振込
・即時入金
管轄 ベリーズ国際金融
サービス委員会(IFSC)
セーシェル金融庁 金融庁 金融庁
・いずれも2021年1月4日時点の情報
- 公式サイトを元に筆者作成
※SBIFXトレードのスプレッドは取引単位が1-1,000通貨の場合

 

違い1,レバレッジ

少ない資金で大きな利益を目指すならば、レバレッジの大きさに注目したい。1USD=100円のレートのときに米ドルを100万円分購入し、1USD=101円のときに売却したケースでシミュレーションしてみよう。分かりやすくするために、手数料やスプレッドはないものとして考える。

例として、レバレッジがない場合、100万円で1万米ドルを購入でき、1USD=101円のときに売却すれば、101万円を得られる。つまり、利益は1万円だ。一方で、レバレッジが25倍の場合は、100万円の資金で25万米ドルを購入できることになり、1USD=101円のときに売却すれば、2,525万円を受け取ることができる。つまり、利益もレバレッジ分が増えて25万円になる。

金融庁に登録している日本のFX会社では、最大レバレッジを25倍以下に設定しなくてはならない。そのため、日本のFX会社で得られる利益は、レバレッジがないときと比べて最大25倍と計算できる。

一方、日本の金融庁に登録していない海外FX会社においては、各登録機関の規制に従ってレバレッジを設定しているため、25倍を超えることも可能なのだ。実際に、Axiory(アキシオリー)では最大400倍、XM(エックスエム)では最大888倍のレバレッジを適用してFXトレードを行うことができる。1USD=100円から1USD=101円に為替レートが動けば、100万円の資金で400万円、888万円の利益が得られる計算になるのだ。

少ない資金で大きな利益を期待するならば、レバレッジが大きな海外FXが良いだろう。とはいうものの、投資においては常に利益が得られるとは限らない。レバレッジが大きいと損失も大きくなるため、ローリスクローリターンの投資を目指すならば国内FXが良いだろう。

違い2,スプレッド 

スプレッドとは、簡単にいえば買値と売値の差のことだ。スプレッドが広ければFX会社にとっての利益が大きくなり、狭ければ投資家にとって有利なトレードを行える。例えば、為替レートが1USD=100円のとき、100円を出せば1米ドルを購入できるのではない。通常、買値は少し高く、売値は少し低く設定されているからだ。

仮に、「米ドル/円が0.2銭」と「米ドル/円が1.0銭」のFX会社で、1,000米ドル分購入した場合を比較してみよう。スプレッドが0.2銭のFX会社ならば1米ドルあたりの日本円が0.2銭を超えるドル高・円安となった時点で利益が生じ、スプレッドが0.1銭のFX会社ならば1米ドルあたりの日本円が0.1銭を超えるドル高・円安となった時点で利益が生じる。つまり、スプレッドが低いFX会社ほど少しの為替レートの動きで利益が生じやすいのだ。

国内FXは海外FXと比べるとスプレッドが狭い傾向にあり、投資家が有利にトレードを進められることが多い。しかし、海外FXの中にもXMのようにスプレッドを狭く設定している会社があるため、どちらがいいと一概には判断できない。

なお、スプレッドは一日に何度も変動するので、重要経済指標発表時などのスプレッドが開きやすいタイミングを避けて有利な条件で取引するようにしよう。

違い3,ゼロカットシステムの有無

海外FXでは、損失が残高を下回ったときはゼロカットシステムでマイナス分の損失をFX会社が負担する。そのため、為替がどんなに急激な動きを見せても、取引口座残高以上のマイナスは出ないため、FX会社から追加資金の入金を要請されることはない。

一方、国内FXでは、証拠金をFX会社に預けてトレードを行う。為替が予想外の動きを見せたときは、証拠金維持率を下回る損失が出ることがあるだろう。その場合には「追証(おいしょう)」と呼ばれる証拠金維持率を回復させるための追加証拠金を差し入れることを要請される。国内のFX会社はレバレッジが低く抑えられているため海外FXよりは損失が大きくなりにくいが、海外FXのようにゼロカットシステムがなく、追証を請求されるケースもあるので慎重なトレードを心がけよう。

違い4,取引方法

FXの取引方式は、DD(ディーリング・デスク)とNDD(ノン・ディーリング・デスク)の2つに大別できる。FXは実質的には投資家とFX会社の間の取引であり、投資家の利益が大きくなるとFX会社が損失を被ることもある。そこで、投資家とFX会社の間にディーラーを介在させることで、FX会社が大きな損失を被らないように調整するのがDD方式だ。

一方のNDDは、ディーラーを介さない取引方法だ。海外FX業者ではほとんどがNDDのため、FX会社にとって多大な不利益になるトレードであっても弾かれることは少ない。

国内FX業者では、大半がDD方式を採用しているが、一部ではNDD方式を採用している。DD方式の場合はスキャルピングや自動売買を禁じていることが多い半面、スプレッドが狭いという魅力もある。一方、NDDには約定力が高いという魅力がある。DDとNDDの特徴を理解し、自分に合う取引方式を採用しているFX会社を選ぶようにしよう。

違い5,取引ツール

海外FX会社では、MetaQuotes Software社が開発したMetaTrader4、もしくはMetaTrader5を取引ツールとして用いていることが多い。そのため、ある海外FX会社から別の海外FX会社に乗り換えても、取引ツールが同じであるため迷わず操作できるというメリットがある。しかし、MetaTrader4やMetaTrader5を使いづらいと感じている方にとっては、別の海外FX会社に乗り換えても使いにくいままとなってしまう。

反対に、ほとんどの国内FX会社では独自の取引ツールを提供している。パソコン用だけでなくスマホ用(Android、iPhone)を用意しているばかりか、GMOクリック証券に至ってはスマートウォッチのAndroidWear用も準備しているのだ。実際に利用してみて使いづらさを感じたときは、別の国内FX会社で口座を開けば異なる取引ツールを利用も可能だ。

共通した取引ツールが良いのか、FX会社オリジナルの取引ツールが良いのかに優劣を付けることは難しい。多くのFX会社ではデモ口座で実際の操作の一部を体験できるので、試してみてから使い勝手の良さそうな取引ツールを選んでみてはいかがだろうか。

違い6,取り扱い通貨数

取り扱い通貨数(通貨ペア)が多いと、FXトレードの選択肢が広がる。例えば、米ドルやユーロ、日本円などのメジャー通貨は取引量が多くて価格変動も少ないが、南アランドなどの新興国通貨は価格変動が大きく、利益を出しやすい傾向にある。取り扱い通貨数の多いFX会社ならば新興国通貨の取り扱いも多いため、思い切った取引ができるだろう。

一般的に、海外FX会社のほうが取り扱い通貨数が多い傾向にある。また、FX口座ではトレードをしなくてもポジションを保有するだけでスワップポイント(二国間の金利差から生まれる利益)が得られるものもあり、海外FX会社はスワップポイントが高い傾向にある新興国通貨を扱っていることが多い点も特徴だ。FXトレードだけでなくスワップポイントによる利益を狙う場合には、海外FX会社を検討してみるといいだろう。

一方、国内FX会社は海外FX会社と比べると取り扱い通貨数が少ないことが多いが、ヒロセ通商のようにメジャー通貨からマイナー通貨まで、幅広い種類を扱うFX会社もある(通貨ペア数50、2021年1月4日時点)。自分がトレードしたい通貨ペアがあるのか、また、ポジションとして保有したい通貨を扱っているのかでFX会社を選ぶようにしよう。

違い7,口座開設書類

FX口座を開設するときは、海外FX会社か国内FX会社かに関わらず、運転免許証やパスポートなどの写真付き身分証明書を「本人確認書類」として提出しなくてはいけない。それに加え、海外FX会社では現住所を確認できる書類、国内FX会社ではマイナンバーを確認できる書類が求められる。

いずれにしても、2つの書類だけを求められていることが多いため、海外FXも国内FXも同程度に手間なく口座開設できるといえるだろう。

違い8,税金

海外FXによる利益は、雑所得として総合課税方式で計算される。総合課税とは、ほかの所得税の課税対象と合算して計算する方式のことで、例えば海外FXによる利益が1年間で100万円、給与所得が年に500万円であり、そのほかに所得がない場合には合計600万円が課税対象所得となる。

課税対象所得が600万円のときは、控除額が42万7,500円で所得税率が20%であるため、所得税額は以下のように計算できる。

  • 600万円×20%-42万7,500円=77万2,500円

ちなみに、雑所得も住民税の対象であるため、所得税を納付した後で住民税の通知が届くことになる。住民税は地域によって多少差はあるものの課税対象所得の約10%なので、あらかじめ概算して準備しておくようにしよう。

一方、国内FXによる利益は申告分離課税で計算される。申告分離課税とはほかの所得と合算しないで計算する方法のことで、単純にFXによる利益だけで税額が決定する。この申告分離課税の税率は、課税対象金額に関わらず一律20.315%だ。

例えば、国内FXで100万円の利益が生じた場合、税額は以下のように計算できる。

  • 100万円×20.315%=20万3,150円

また、前例同様に年間の給与所得が500万円の場合の所得税は下記の通りとなる。

  • 500万円×20%-42万7,500円=57万2,500円

申告分離課税の税率にはすでに住民税分が含まれているため、後日、国内FXの利益に対する住民税の通知が届くことはない。

違い9,入出金手段

入出金手段がバラエティに富んでいるのは海外FX会社だ。仮想通貨として出金できるFX会社もあり、FXによる利益をさらに投資に回すこともできる。

しかし、入出金手段は選択肢が多ければ良いというものでもない。投資家自身にとって使いやすい入出金の方法を利用できるFX会社を選ぶようにしよう。

違い10,管轄

日本のFX会社は、すべて金融庁の管轄下にある。一方、海外のFX会社は日本以外の国の金融庁か、あるいはそれに相当する機関が管轄している。一般的に、中南米にあるベリーズのように税金がないか、もしくは著しく低い税率としていることが多い。

2,海外FX業者と日本FX業者どちらがいいのか?

海外のFX業者が良いのか、国内FX業者が良いのかを一概に断じることはできない。それぞれに特徴があるため、投資家自身が何を重視するのか、どのようなFXトレードを望むのかによって適した業者が異なる。海外のFX業者と日本のFX業者のメリットとデメリットを紹介するので、ぜひ参考にして自分に合う業者を選んでいこう。

海外FX業者のメリット・デメリット

海外FX業者の大きな特徴でもありメリットでもあるのが、レバレッジの大きさだ。日本の金融庁の規制に縛られないため、数百倍のレバレッジ、業者によっては千倍を超えるレバレッジを利用できることがある。レバレッジが大きいと少ない元手でも大きく増やすことができるため、FXに使える資金が少ない方も利用しやすいだろう。

ゼロカットシステムが採用されていることも、海外FX業者のメリットだ。どんなに損失が生じても追証を請求されることはないため、安心して投資ができる。また、NDDであることから透明性の高い取引ができることも海外FX業者のメリットといえるだろう。

しかし、海外FX業者のレバレッジはデメリットにもなり得る。為替が予想外の方向へ動いた場合は、高いレバレッジをかけて投資をしている場合は損失も大きくなるだろう。レバレッジは常に最大のものを選択する必要はないので、相場の動きを見てレバレッジも臨機応変に変更しよう。

また、海外FX業者によっては、サイトの一部あるいは全部が外国語であることから、使いづらく感じるかもしれない。それに加え、サポートサービスも日本語に対応していない場合や、スムーズにメッセージのやりとりができない可能性もある。利用しやすい言語かつサポート体制なのかどうかを口座開設前にチェックするようにしよう。

国内FX業者のメリット・デメリット

レバレッジが低い分、堅実なトレードができる点が国内FX業者のメリットといえるだろう。また、スプレッドも狭い傾向にあるので、為替の動きが少ないときでも利益を生み出しやすい。

加えて、すべてのサービスを日本語で利用できることも、国内FX業者ならではのメリットといえるだろう。多くのFX会社では、チャットサービスや電話による即時サポートを提供しているため、疑問が生じたときにはリアルタイムで解決することも可能だ。

デバイスに応じたさまざまな取引ツールがある点も、国内FX業者のメリットといえる。移動中や外出先ならばスマホアプリで、自宅ではパソコンでと、取引するデバイスを使い分けることもできる。

メリットが多い一方で、追証が発生したり、ロスカットで証拠金の一部を失ったりなどのデメリットもある。また、レバレッジが低いため、投資資金が少ない場合は利益も少なくなりがちだ。特に、為替変動の少ない日本円や米ドルなどのメジャー通貨を少額の資金でFXトレードする場合には、思うような結果を得られない可能性もあるだろう。

3,好みや使い勝手によって納得できるFX会社を選ぼう

国内外に数多くのFX会社があるが、いずれもメリットがありデメリットもある。まずは、何を重視してFX会社を選びたいのかを自身の中で明確にしてから、基準を満たす会社を選ぼう。

なお、国内外を問わず、口座開設は無料であることが一般的だ。少額の余剰資金を使ってトレードを実際に行い、サービス内容や取引ツールが自分に合わないと感じた際に、別のFX会社に変えるのも良いだろう。

近藤真理
執筆・近藤真理
南山大学外国語学部卒業。野村證券の引受部門で勤務後、ビジネス系翻訳や工業系翻訳業務に従事。
2013年より、総合証券とネット証券を使い分けながら、資産運用を開始。2017年から各種WEBサイトのフリーライターとして活動、現在は経済金融系記事を中心に執筆している。

■保有資格
証券外務員一種、二種
投資診断士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
AFP認定者
南山大学外国語学部卒業。野村證券の引受部門で勤務後、ビジネス系翻訳や工業系翻訳業務に従事。
2013年より、総合証券とネット証券を使い分けながら、資産運用を開始。2017年から各種WEBサイトのフリーライターとして活動、現在は経済金融系記事を中心に執筆している。
■保有資格
証券外務員一種、二種
投資診断士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
AFP認定者

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