●この記事のポイント ・スタートアップ企業の成長を支えるべく設計された、サブスクリプション型のハードウェア支援サービス「Lenovo for start-ups」。Lenovoは、このサービスを掲げて「IVS2025」に出展する。 ・なぜハードウェア企業のLenovoがスタートアップ支援に取り組むのか、IVSとどのようなシナジーを生むと期待できるのか。
スタートアップ企業にとって、限られたリソースのなかで「本業に集中する環境」をどう整えるかは、大きなハードルです。 とくに、ハードウェアに関する環境整備は創業期における負担になるにもかかわらず、多くのスタートアップが最適なソリューションを見つけられていません。
こうしたハードウェアがもたらす“成長の足かせ”を解決しようとするのが、Lenovoが展開する 「Lenovo for start-ups」。スタートアップ企業の成長を支えるべく設計された、サブスクリプション型のハードウェア支援サービスです。 Lenovoはこのサービスを掲げ、2025年7月2日から開催される国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2025」に出展。
なぜハードウェア企業のLenovoがスタートアップ支援に取り組むのか? LenovoとIVSはスタートアップに対して、どのようなシナジーを生み出そうとしているのか? レノボ・ジャパンでLenovo for start-upsのプロジェクトを牽引する中田 竜太郎氏、IVSのCOOである岡田 友和氏、2人のキーパーソンに語っていただきました。
目次
- 普通はやりたがらない!?Lenovoがハードウェアで支援する理由
- Lenovo for start-upsとIVSの高い親和性
- 大局的に見た日本のスタートアップの課題とは
- LenovoとIVS、協創がスタートアップにシナジーをもたらす
普通はやりたがらない!?Lenovoがハードウェアで支援する理由

中田 :Lenovo for start-upsは、スタートアップ企業に対して、創業初期に必要なアクションや情報をアドバイスする「ナレッジインジェクション」、その企業に必要なデバイスを吟味して特別価格で提供する「スペシャルオファー」、法人として必要なセットアップやセキュリティ設定を1台から対応する「セットアップサービス」の3つからなるサブスクリプションサービスです。
スタートアップ企業には、ITコーポレート、いわゆる“情報システム”と呼ばれる部門が備わっていないことがほとんどです。社長やメンバーがハードウェアの選定やセキュリティ設定などに時間を割かれ、本業に対して十分なリソース注入ができなくなってしまうのです。これは、スタートアップ企業が失敗してしまう原因になります。 情報通信機器の製造販売を専門に行うLenovoであれば、この課題に対してハードウェアの観点から貢献できるのではないかと考えたことがこのプロジェクトがスタートしたきっかけです。
岡田 :私は、Lenovo for start-upsは、スタートアップにおけるキャッシュフローの観点からも優れたサービスだと考えています。 PCを1台購入するのに20万円程度すると仮定して、メンバーが5人いれば100万円です。これをスタートアップ企業が揃えるのは難しい場合があります。その課題に対しても「月額」でサポートするというところが、非常に芯を捉えていると感じますね。
中田 :個人のPCを業務に使用しているケースも多いですが、そうなると情報の取り扱いなど、セキュリティ面での不安が大きくなります。
——しかし、それだけスタートアップ企業が抱える課題に食い込んだサービスであれば、ほかにも同じようなハードウェア支援を行っている企業はありそうですが……。
中田 :スタートアップ向け、と銘打っているものはあまり耳にしませんね。 これは、ハードウェアを月額料金で提供するサブスクリプションが、実質的に「金融サービス」に近い仕組みであるためです。
岡田 :金融サービスを受ける際は、与信が必要になります。現状のキャッシュフローやファクトの部分だけに着目すると、スタートアップ企業の与信はそう高くありません。 ハードウェアのサブスクリプション事業は、多くの企業にとって「推進しづらい事業」なのでしょうね。
中田 :そうですね。とくにディープテックの分野は、なかなか売り上げを創出しづらく、初期には赤字ということが少なくありません。売り上げがない、または赤字の企業は基本的には金融サービスを受けられないため、資金がないにもかかわらずPCなどのデバイスを購入しなければいけないという事態に陥ってしまいます。 このケースを回避してキャッシュアウトを抑えられるのは、Lenovo for start-upsの大きなメリットの1つです。
岡田 :ハードウェア分野で広く知られるLenovoが、「リスクを取ってスタートアップを支援する」ことには、大きな意義があると感じますね。
中田 :ディープテックなどのスタートアップが、本業に注力できない、適切なサービスが受けられないために消えていくことは、日本における新産業誕生の可能性を欠いてしまうことになります。 Lenovoはむしろ、それをリスクと捉えている、といってもよいかもしれません。