正教会関係者は、「クレムリンの指導者は正教会の信仰を守ると声明しているが、その裏に帝国主義的野心を隠している。世界の正教会の大多数が戦争に反対しているなか、ロシア正教会最高指導者モスクワ総主教キリル1世はプーチン氏の戦争を全面的に支持している」と指摘する。

一方、プーチ大統領はロシア正教を積極的に支援し、国民の愛国心教育に利用してきた。プーチン氏自身は教会の祝日や記念日には必ず顔を出し、敬虔な正教徒として振る舞ってきた経緯がある。

参考までに、ソ連国家保安委員会(KGB)出身のプーチン氏はロシア正教会の洗礼を受けている。その経緯について、本人は「母親は自分が1カ月半の赤ん坊の時、正教会で洗礼を受けさせた。父親は共産党員で宗教を嫌っていた。正教会の聖職者が母親に『ベビーにミハイルという名前を付ければいい』と助言した。洗礼の日が大天使ミハイルの日だったからだ。しかし、母親は『父親が既に自分の名前と同じウラジーミルという名前を付けた』と説明し、その申し出を断わった」という。

すなわち、プーチン氏は‘幼児洗礼‘を受けて正教徒となったわけだ。そのプーチン氏がいつの間にか,聖ウラジーミルの生まれ宗教関連施設を破壊し続け変わりというナラティブ(神話)を考え出し、同じ正教国のウクライナに軍事侵略を始め、同国の宗教関連施設を破壊し続けているわけだ。

プーチン大統領 クレムリンHPより

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。