トロント大学はカナダの大学の御三家の頂点であり、あとの2つがバンクーバーのUBC、モントリオールのマギル大学です。私は大学と業務上の取引関係がありますが、トロント大学は別格という感じを持っています。そのヒントン氏がディープラーニングの分野で十分な成果を出せたのは学問の環境が整い、政治的不安定感がないカナダゆえというのは手前味噌と言われるかもしれません。
さて日本の大学もアメリカの優秀な研究者の争奪戦が水面下で繰り広げられているようです。しかし、私は日本ではアメリカの研究者は根付かないとみています。理由はいくつもあります。
最大のネックは給与と研究費です。給与は日米で3倍以上の開きがあります。研究費に至ってはお話にならないレベルで、様々な統計がありますが、日本私立大学協会の数字では日本の公的研究費が1800億円に対してアメリカのそれは2兆円規模であります。つまりどれだけ優秀な先生がアメリカから来ても研究費という手と足がなければ何もできないのであります。
次に現場研究において日本人の研究者や学生が外国の先生に言語のみならず思想構築のプロセスでなかなかついて行けないとみています。それまで世界最高峰の学生や研究員を抱えていた教授にとって日本に来たら裸一貫では話にならないのです。また海外の研究者が学会のみならず、様々な人的交流、つまりアカデミア コミュニティを日本で形成するのが難しいと思います。特に日本の研究者は思想的にもそこまでオープンではないと思います。
日本の教育水準は高いのですが、それは底上げとバラつきが少ないということなのです。誰もが一定レベルにはあるのですが、その上の殻が破れないのです。一方、北米の大学生や研究者を見ていると突き抜けている人がそれなりにいます。つまり日本人はAランクを取れる人は多いかもしれませんが、AAAランクが極めて少ないと言ったらよいのでしょうか?その理由として研究ディベートや学会発表、論文数、さらにそれが世界で認められるためのプレゼン能力という点においてまだまだな気がします。