海面に浮かぶ美しい輪。
それはただの泡ではなく、人間との“対話”のサインかもしれません。
米SETI研究所の最新研究で、ザトウクジラが人間に向けて意図的に「泡のリング(バブルリング)」を作る行動が報告され、科学者たちを驚かせています。
まるで喫煙者が煙の輪を吹くように、好奇心に満ちたクジラたちは水中で泡の渦を巻き上げていたのです。
この行動が示すのは、遊び心だけではなく、種を超えたコミュニケーションの可能性かもしれません。
研究の詳細は2025年5月15日付で科学雑誌『Marine Mammal Science』に掲載されています。
目次
- 泡で語りかけるクジラたちの不思議な行動
- 宇宙人との交信の練習台に?
泡で語りかけるクジラたちの不思議な行動
ザトウクジラは、これまでにも獲物を泡で囲い込んだり、求愛時に泡を使ったりと、泡を「道具」として使うことが知られてきました。
しかし今回注目されたのは、円形の泡のリングを人間に向けて吹き出すという、これまでにほとんど記録されていなかった行動です。
研究チームは今回、11頭のザトウクジラによる12回のバブルリング生成事例を記録しました。

これらの多くは、ボートや泳ぐ人にクジラが近づき、泡のリングを吹き出すというものでした。
特に注目すべきは、リングの発生時にクジラがまったく攻撃的な様子を見せなかったことです。
尾で海面をたたいたり、大きな泡のカーテンを作ったりするような威嚇行動は見られず、クジラたちは穏やかに、むしろ楽しんでいるかのように振る舞っていました。
多くのケースでは、クジラはボートや人間に1体長(約13メートル)以内まで自発的に接近しており、ある例では泡のリングを人の真下で吹き出し、その泡が水面に浮かび上がって泳いでいる人を包み込むように広がったそうです。