ただし、今回の研究には限界もあります。
性別適合手術における後悔を抱える人の中には医療機関に戻ってこない人も多く、統計的に過小評価されている可能性があります。
また、トランスジェンダー当事者の後悔は政治的に利用されやすく、発言が抑圧されやすい環境にあるとも指摘されています。

それでも今回の研究は、後悔という感情を手がかりに、医療倫理や個人の尊厳について再考する契機を提供しています。
また、どのようなプロセスが重要な決定に後悔を生じさせないかも理解できます。
手術などが行われるまでの面倒に思える手順と時間も、内面を見つめる機会とみなすなら、後になってがっかりすることは少ないはずです。
同様に人生における重要な決断も、そのことについて徹底的に考慮することで、悔いを残すことを減らせるはずです。
もしかしたら「後悔しない」秘訣は、たった一つの正解を見つけて選ぶことではなく、「本当に自分自身と向き合ったかどうか」にあるのかもしれません。
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参考文献
People regret having kids far more than having gender-affirming surgery
https://newatlas.com/health-wellbeing/regret-gender-affirming-surgery/
元論文
A systematic review of patient regret after surgery- A common phenomenon in many specialties but rare within gender-affirmation surgery
https://doi.org/10.1016/j.amjsurg.2024.04.021
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。