その結果は興味深いものでした。
例えば、豊胸手術(乳房増大術)では最大9%、体形矯正手術(脂肪細胞を減らし体型を整える手術)では最大33.3%の後悔率が報告されていました。
さらに、医療とは無関係な決断として、子どもを持つことに関しては7%、タトゥーに関しては16.2%の人々が後悔していると報告されています。
では、性別適合手術においてはどうだったのでしょうか?
過去の大規模なオランダの研究では、1972年から2015年まで追跡されたトランスジェンダーの人々のうち、トランス女性の0.6%、トランス男性の0.3%が手術を後悔していると回答しています。
また、2021年に行われたメタ分析(27件の研究、7928人対象)でも、後悔率はわずか1%未満という結果でした。
これは、他の多くの医療・非医療の決断に比べて極めて低い割合です。
では、どうしてこのような結果になるのでしょうか。
なぜ性別適合手術は後悔が少ないのか?後悔しない決定をするには?
分析の結果が示すように、性別適合手術を受けた人々のほとんどは手術を後悔していません。
一方で、子どもを持つことや、タトゥー、豊胸手術といった決断は、性別適合手術よりも高い割合で後悔されています。

この差の背景には、決断に至るまでの準備の厳密さと長期的な心理的支援があると考えられます。
性別適合手術を受けるには、数年間にわたる精神医療のサポート、ホルモン療法の実施、トランスジェンダーとしての社会的移行、医療従事者による多角的な評価などの多くの過程を通過しなければいけません。
これらの条件をクリアして初めて手術が行われるため、「衝動的な決断」はまず存在しません。
むしろ、自分自身と徹底的に向き合い、内面から納得した上での選択であることが多く、このことが後悔する人が少ないことに繋がっていると考えられます。