ハイザー氏の反論:シュメール天文学の限界
ハイザー氏はさらに、シュメール人が太陽系に5つ以上の惑星が存在することを知っていたという証拠は全くないと主張する。彼の研究では、主に3つの点が指摘されている。
印章の碑文には、天文学、ニビル、あるいは惑星に関する記述は一切ない。
印章に描かれているとされる「太陽」のシンボルは太陽ではない。これは、他の何百もの円筒印章、モニュメント、シュメール・メソポタミア美術の作品における太陽の一貫した描写/象徴体系と一致しないため、確実である。
現存するシュメール・メソポタミアのいかなるテキストにも、シュメール人やメソポタミア人が5つ以上の惑星を知っていたと記述されているものはない。天文学を扱った楔形文字の粘土板は数多く存在し、それらはすべて編纂・出版されている。これらの資料は研究者であればアクセス可能だが、その解読や内容理解の難易度には幅がある。
作者の意図と古代の知識
これらの対立する見解は、さらなる疑問を投げかける。シュメールの円筒印章に描かれた奇妙な描写は確かに魅力的だ。印章の作者が中央に(太陽に似た)巨大な星を配置し、その周りに他の天体を描いたという事実は非常に興味深い。
ハイザー氏は中央の星が我々の太陽ではなく別の星だと主張するが、もしそうだとしても、いくつかの疑問点が残る。なぜ印章の作者は、他の星々を中央の星と同じように描かなかったのか。なぜ中央の星だけが他の天体と比較して大きく表現されているのか。そして、もし全ての天体が星であるならば、なぜ中央の星だけが太陽を思わせる光線を放つように描かれているのか。これらが単なる偶然の一致であると結論付けるのは早計かもしれない。
一方で、この円筒印章に描かれた物体が実際に惑星であると仮定するならば、紀元前3千年紀の古代シュメール人が、どのようにして我々の太陽系全体、さらには各惑星のおおよその大きさを把握し得たのかという新たな大きな謎が浮上する。
この知識の源泉はどこにあったのだろうか。シュメール人が独自に天文学を発展させた結果なのか。あるいは多くの古代文化の伝承に見られるように、「天から降りてきた神々」によって、その知識の一部がもたらされたという可能性も考慮すべきだろうか。
この古代シュメールの円筒印章が、シッチン氏の言うようにニビルを含む太陽系全体を描写しているのか、それともハイザー氏らが主張するように天文学的な価値を持たない単なる装飾なのか、その解釈は未だ定まっていない。
さらに考察を深めるならば、4500年前にこれほど重要な天文学的知識を後世に伝える手段として、円筒印章という媒体が果たして適切だったのかという点も検討に値するだろう。この小さな印章に込められた真実は何なのか、多くの謎が残されている。
4500年の時を超え、この円筒印章は我々に何を語りかけようとしているのだろうか。
参考:The Ancient Code、ほか
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