実験の結果、すべてのクマノミがすぐにオキアミを宿主に付け、約1時間後には餌を横取りされた9例を除く17例の全てで、イソギンチャクの口腔から紐が出ていたそうです。
クマノミの行動調査
このほかにも様々な条件でクマノミの行動が調査されています。
大きさの異なるオキアミを10個体のクマノミに与える実験では、クマノミの口に入る餌は自分で消費し、それより大きい餌を宿主に与えることが判明。
餌が植物性の場合、クマノミは小さく刻んだ柔らかい緑藻は食べるものの、大きな餌は宿主に持っていかず、硬い褐藻や毒のあるカイメンは大きさにかかわらず捨てることが分かりました。

さらに、クマノミに繰り返し餌を与えた実験では、17回目までクマノミがすべて食べていたようですが、満腹になるにつれてクマノミが宿主に餌を与える確率が大きく上昇したそうです。
餌やりでイソギンチャクが成長?
次に、クマノミの餌やり行動がイソギンチャクの成長に関係しているのか調査が行われました。
クマノミに大きな餌を与える群9例、直接イソギンチャクに餌を与える群11例、何も与えない群11例の3群を作り、3ヵ月後の成長を比較。クマノミに餌を与える群とイソギンチャクに直接餌を与える群は何も与えない群と比較して有意に大きくなっていることが判明しました。
餌やりによるイソギンチャクの成長はクマノミにとっても住居が大きくなるメリットがあり、互いに利益を得ていると考えられています。
さらなる研究課題
今回はクマノミへ人為的に餌を与える実験でしたが、研究グループはナマコの死骸をイソギンチャクに運搬するクマノミの何度も目撃していることから、我々の知らないところで餌やり行動が起こっていると考えているといいます。
さらに、今回はイソギンチャクの成長という長期的な影響に着目していましたが、給餌直後における宿主の変化など短期的な影響も調査する必要があるようです。