先ず、事件を可能な限り再現してみる。

オーストリア南部シュタイアーマルク州の州都グラーツの高校で10日午前10時(現地時間)、銃乱射事件が発生し、先生1人と生徒9人が死去し、十数人が重軽傷を負った。容疑者(21歳)は犯行後、校内のトイレで自殺した。

グラーツ市内の銃乱射事件、オーストリア国営放送(ORF)の中継から 2025年6月10日

オーストリアの戦後で最悪の銃乱射事件(犠牲者数10人と容疑者1人、計11人が死去)となったことを受け、ストッカー首相は同日午後、グラーツ入りして、記者会見で「オーストリアにとって今日は暗黒の日だ。国の悲劇だ」と述べ、公的機関では国旗を半旗にし、11日から3日間を服喪期間とすると宣言し、全てのイベントを中止する意向を明らかにした。

同日午後7時半、グラーツ市のカトリック教会聖堂で追悼集会が開かれた。翌日の11日午前10時、全土で1分間の黙祷が行われた。

グラーツ市は同国2番目に大きい都市で、事件の現場の学校(生徒数約400人)は中央駅から近いところにある。銃乱射の連絡が入ると、テロ対策部隊「コブラ」を含む300人以上の警察官が動員され、学校周囲は閉鎖、上空にはヘリコプターが旋回した。聖霊降臨祭の休暇が終わり、学校が再開されたばかり。大学入試資格試験(マトゥ―ラ)も終わり、来月から始まる夏季休暇が近いこともあって生徒たちの間にも明るい雰囲気が漂っていた。そのようなとき、同学校の元生徒が突然、2丁の武器、拳銃と散弾銃を持って教室に乱入して乱射し、教室は一瞬に銃声と悲鳴の声が響いたという。

警察当局によると、犯行は単独で、容疑者は前科はなく、武器も合法的に犯行直前に購入している。オーストリアでは18歳以上になれば、武器を購入し、所持できる。容疑者は武器許可証を持っていた。武器法によると、武器は3分類され、容疑者が所有していた武器はカテゴリーBに入り、購入前には精神的診察を受けることになっている。ちなみに、同国内務省によると、オーストリアでは今年4月現在、約37万人が約150万丁の武器を所有している。