黒坂岳央です。

過去記事で何度か書いてきたが、もはや「大学進学は有利」という従来の常識は、揺らぎつつある。

AI技術は目覚ましく、大卒者が目指す多くの事務職、企画職、営業職、経理職などはAIに代替されるリスクが高まっている。

筆者は工業高校の電気科出身で、同級生の多くは電気工事士や配線工事といったインフラ系の現場に進んだ。そんな自分から見ても、インフラ系の仕事はAI時代においてきわめて合理的かつ持続可能なキャリアであると考えている。

一方で、インフラ関連職である電気、ガス、水道、道路などの分野が輝く。「やりたいことはとりあえず大学に入ってから考える」とか「デスクワークで働きたいから大学へ」という時代が終わり、新たな世界が幕を開けたのだ。

kazoka30/iStock

インフラ業務がAI時代に輝く理由

インフラ作業は現場での物理的な対応が不可欠だ。配線や配管、道路補修などは一つとして同じ状況がなく、ロボットによる完全自動化には技術的にもコスト的にも限界がある。

もちろん「ロボットが進化し、エネルギー問題が解決すれば代替可能では?」という指摘はあるだろう。しかし、そんな時代になれば物理要素が少ないデスクワークの状況は今より人手を必要としなくなる。リスクはどちらが大きいか明らかだろう。

また、インフラ業務は厳しい法規制や資格制度に守られている強みがある。資格取得には一定のハードルがあるが、一度取得すると安定したニーズがあり、業務の責任を明確化する必要性から人間の判断や行動が求められ続ける。

さらにあっという間に消滅した「議事録作成」といった新人が担う業務と異なり、インフラは世界中で人間が社会生活を営む上で必ず必要になる。水やガス、電気にまつわる機械が壊れれば必ず修理が必要になり、それは人口減少が進む日本で、インフラの保守・管理の需要は衰えないどころか担い手不足でさらに強まる。

実際、現在のインフラ系技能職の求人倍率は工業高校卒業生で約20倍という超売り手市場であり、電気工事士の平均年収は約550万円と、日本の平均年収(約460万円)を大きく上回っている。さらに、成績中程度(中学オール2~3程度)でも、トヨタ系や東証プライム企業など大手への就職実績が豊富で、初任給20万円以上、賞与4~7ヶ月という待遇も魅力的だ。