臨死体験。それは、死の淵から生還した人々が語る、時に美しく、時に不可解な世界。体験した人の多くは「天国を垣間見た」と証言する。

 しかし、誰もが喜んでこの世に戻ってきたわけではない。中には、愛と光に満ちた死後の世界から無理やり引き剥がされ、苦痛に満ちた肉体へと「強制送還」されたと感じている人々がいる。彼らは口を揃える。「あの場所に戻るのが待ちきれない」と。今回はそんな奇妙なエピソードを紹介しよう。

「まだ、お前の時ではない」―天国から突き返された魂

 カリフォルニアのダンサーだったピーター・ベダード氏は、トラックにはねられる事故で臨死体験をした。彼によると、衝突の直前、魂が肉体から飛び出したという。彼は自分の体を見下ろし、自分が死んだことを悟った。しかし、恐怖はなく、回転する白い光のトンネルへと吸い込まれるにつれて、「信じられないほどの生命感」が彼を満たしていった。

 死後の世界で、彼は「ガイド」と出会う。しかし、ガイドは彼に告げた。「お前はまだここにいるべきではない」。そうして彼は、重傷を負った体へと送り返されたのだ。

「早くまた死にたい」天国から“強制送還”された人々の奇妙な証言の画像2
(画像=ピーター・ベダード氏 画像は「Daily Mail Online」より)

 事故後の数年間、ベダード氏は慢性的な激痛に苦しんだ。あまりの苦しさに自ら命を絶つことも考えたという。だが、「もし自殺したら、天国にまた拒絶されてしまうのではないか」という恐怖が、彼を踏みとどまらせた。現在、彼は自らの体験を乗り越え、催眠療法士として人々の心と体の痛みを癒す手助けをしている。

完全な愛の世界からの「強制送還」

 ヴィンセント・トルマン氏は、ボディビル用サプリメントの過剰摂取により、レストランのトイレで死の淵をさまよった。彼もまた、白い服を着た「ガイド」と名乗る紳士に出会い、天国を案内されたという。その世界は、想像を絶する愛と平和に満ちていた。

「私はその空間と一体になった。芝生に素足で触れると、とてつもない愛と安らぎが流れ込んできたんだ。花や木、水からも完全な一体感を感じた。ようやくその場所に慣れてきた、その時だった」(トルマン氏)

「早くまた死にたい」天国から“強制送還”された人々の奇妙な証言の画像3
(画像=ヴィンセント・トルマン氏 画像は「Daily Mail Online」より)

 ガイドは彼に告げた。「ここを去る時が来た。辛いだろうが、その価値はある」。ガイドと抱きしめ合った瞬間、爆発するようなエネルギーと共に、トルマン氏は自分の体へと叩きつけられたという。彼がこの世で意識を取り戻した時、すでに3日間が経過し、昏睡状態に陥っていた。

「まるで天国の状態から引き剥がされ、完全に強制的に体に戻された感じだった」と彼は語る。数ヶ月間は混乱に苦しんだが、今では結婚し、自らの体験を語りながら「再び天国へ行くのがものすごく楽しみだ」と笑顔で話す。